第3章

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「くっ……、なぜだ?なぜ、こんなことをっ……!?」  彼とは、幼い頃からの親友だと思っていた。それが、突然の崩壊。いきなり襲われた王子は、顔をゆがませていた。  その姿を見下ろしながら、彼はあざ笑う。 「ふん。敵国同士なんだから、当然だろう。まさかお前、本気で仲良しだと信じてたのか?つくづく幸せ者だな?」  そう言うと、彼は左手をあげた。どうやら、合図だったらしい。彼の配下の者が複数、物陰から姿を現した。信じられないことに、通行人やどこかの店の客までもが、他人になりすまして潜んでいた。 「あ、う……。」  四面楚歌、多勢に無勢、とは、このことをいうのだろうか。王子は、ただ、うろたえることしか出来なかった。 「この十年、我慢した甲斐があったよ。我が父上から真実を聞かされてから、どれだけこの日を待ち望んだことか……。」  彼は、陶酔していた。しかし、そこに彼を止める者は、誰一人として存在しない。  未だ状況が飲み込めていない王子の為にと、彼は言葉を発し続けた。 「確かに俺も、初めてあんたに会ったときは“お友達になれる”と思ったさ。けどよぅ、まさか、“敵国の王子”だなんてよぅ。ガキだった俺でも気付ねぇわなぁ?そうと知らずに、何年も一緒に遊んでたとは……。」 「そ、そんなっ……。う、嘘だ!!」 「嘘じゃねぇよ。」  信じられないというように、王子は彼に噛みついた。しかし、彼の返事は王子が求めるそれではなかった。王子は、あまりの衝撃に、その場にひざから崩れた。 「哀れだなぁ、王子様よぅ?……、連れてけ。」  放心状態の王子を、彼の家臣たちがどこかへと連れていく。その光景を、さっきまでとは違う表情で彼は見ていた。  こんなことがあったにもかかわらず、街は平穏だった。けっして、不思議なことではない。街の者たちに不信がられないよう、彼は手をまわしていたのだった。 「悪く思うなよな……。」
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