第1章 ある雨の日のこと

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朝、目覚ましのうるさい音で目を覚ます。 ベッドでうつ伏せの状態で目覚ましを止める男。 ゆっくりと体を起こし欠伸を一つ、そして頭を掻きながらベッドから出る。 髪型も何も、寝癖と少しのヨダレのあとが目を引き、いまの彼を一言で表すなら「だらし無い」である。 日暮 空斗〈ヒグラシ ソラト〉 これが彼の名前である。 空斗は、完全に目を覚ますと自宅の一階へと降りていく。 ここには高校2年になる空斗とその両親、それと一つ下の妹と住んでいる。 空斗曰く、「どこにでもある一般家庭」だそうだ。 この家も、両親がまだ幾分か若い頃にローンで建てた一軒家だ。 話によると、まだ半分ほどローンも残っている。 「ふぁぁぁ~~。…おはよー母さん」 リビングへ行くと、空斗の母 早苗が朝食を作りながら空斗の方を見ていた。 「あら~、おはよソラちゃん!今日も時間通りに起きてきたわね」 早苗はその歳に似合わず美人で、近所でも評判の若奥様である。 空斗も自分の身内のいい評判なので、少し鼻が高い。 「クセだから仕方ないさ。それより未羽は?」 未羽〈ミウ〉というのは空斗の一つ下の妹で、早苗の遺伝子を色濃く受け継いでいてそこそこ…というか、学校のマドンナになるくらいは可愛い。
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