《第8章・まっすぐに…》

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佳那子さんは他に人がいないのを良い事に堂々とお風呂に浸かってる。 『2人っきりだから隠す必要なんかないから』 洗った体をタオルで隠して歩いてくる私を見てそう言う佳那子さん。 『それに昨日頭から足まで見ちゃってるし』 『(照)後ろ向いててください』 大きなお風呂の隅に体を隠すように丸くなって浸かった。 振り向いた佳那子さんがこっちにくる。 『せっかく大きなお風呂なんだから』手を掴まれ真ん中へと促された。 『良い眺め、拓也にはまだ見られてないんだ』 『佳那子さーん(照)』 怪我を見る為に下着をつけたままの姿なら何回か見られてるけど。 タオルを巻いて脱衣室に向かっていると、その様子を佳那子さんが携帯で撮っていた。 佳那子さ~ん。 朝食は和洋のバイキング。玉子焼きを多めに取ってると佳那子さんがクスクス笑う。 木々のアーチを正面から抱くように、横から抱くように。 アーチをくぐり手を広げた感じ。正面からとまた下から。 6枚、佳那子さんは撮ってすぐに送信してニヤニヤしていた。 『拓也、かわいいしぐさって喜びそうだから』 『だったら私じゃなくてもぉ~』 『いいの(笑)』 恥ずかしそうにポーズをするからかわいいしぐさになるのよ、と佳那子は思った。 【あなたにその気がないならもう言わないけど】 昨夜美和にそう言ったけど、拓也の気持ちを思うと気にかけずにはいられなかった。 今日のワンピースは白に要所要所に赤いリボンが付いてる、膝丈ってのは変わらないけど。 チェックアウトをしアーチを名残惜しそうに振り返る美和を、楽しそうに見ながら運転する佳那子。 『アーチ気にいった?』 『はい、室内のカーテンもアーチの色合いであのホテル好きでした。連れてきてもらってありがとうございました』 『良いのよ(笑)近いからまた来れば良いわ、拓…。両親と』 『佳那子さんはもう来ないんですか?楽しかったです、また機会があったらまた連れてきてほしいです』 『(笑)かわいい事言うわね、だから拓也が気にい…まぁ良いわ。また連れてきてあげるわ』 『わぁい、ありがとうございます。佳那子さん』 『かわいいと言うか素直と言うか(笑)』 素直さ…拓也に対してもそうあってほしいものだわ、と佳那子は思う。 高速のPA、休憩をし佳那子さんに宿泊代を差し出した。 『誘ったのはあたし、キャンセル代がもったいなくて誘ったから宿泊代なんて気にしなくて良いのよ』 『もらってください』
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