《第8章・まっすぐに…》

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宿泊代の封筒を引っ込めない美和に負けて、受け取りバッグに入れる佳那子。 『半額分、拓也に預けるから何かご馳走してもらいなさい』 松本さんは…(焦) 『か、佳那子さんが持っててください。また佳那子さんに連れてきてもらいたいです』 『拓也は?女湯には拓也入れないけど、連れてきてもらいなさいよ。たまにはおねだりしてわがまま言っても良いんじゃないの?もっとも拓也は言う事聞いちゃうだろうけど(笑)』 『松本さんの…かの…ううん。松本さんはいいんです』 『仮に拓也に彼女がいたとしても、日帰り旅行くらい彼女は許してくれるわよ』『ううん…ううん、彼女に悪いから松本さんとはダメなんです』 佳那子はしかたないわね、っていうため息をつきながら美和とPAを出て車に向かい高速の道に戻り、運転をしながら思う。 手におえない拓也の彼女、今の拓也は美和ちゃんの為なら何でも言う事をきいてしまうわね。 あのクールで何事にも動じない拓也が、こんなにも美和ちゃんの行動で一喜一憂してる姿なんて意外と言えば意外かしら。 けど、拓也の過去を思うと一喜一憂する恋が出来てホッとしてるわ。 出来ればあたしは拓也の彼女には美和が良い。 部屋の掃除が美和の本当の気持ちだと思うの。 『今までで浮かぶ男の人って誰?1人でなくても良いわ』 『松本さん、智行兄、菊地さん、荒井先輩、漫研の先生、本屋の店員さん』 拓也を一番に言った事に佳那子は脈はあると感じた。『その中でバレンタインにチョコをあげた人っている?いなきゃ良いのよ』 『松本さん、智行兄、菊地さん、荒井先輩』 また拓也を一番先に言ったわね、佳那子は脈ありだと思わずにはいられなかった。 『その中で嬉しい時や悲しい時に浮かぶ人っている?』 『………、智行兄』 『智行兄の前って?智行兄って?』 『智行兄はお父さんのお兄さんの1人息子なの』 『ふうん、大切?』 『智行兄はいつも私の事を優先して考えて守ってくれます、だから好きなんです』 佳那子は、拓也が智行を知ってたなら強敵かも?と苦笑した。 『嬉しい時や悲しい時に浮かぶ人って2人じゃないの?智行の前よ』 『………』 『拓也じゃないの?』 『………』 『黙るなら拓也だと思うわよ、まぁ良いわ。その中でお部屋掃除をした人っている?』 『智行兄』 『だけ?』 『松本さん…』 『差し入れをしたり?』 『松本さん…』 拓也が聞けば喜ぶわね!聞かせてあげたい。
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