《第8章・まっすぐに…》

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店から国道へ。 『拓也があなたの事を妹みたいだって?』 『春休み前に直接松本さんから言われました』 『春休みぃ?あれから気持ちだって変わるわよぉっ!妹から恋愛候補としてみるケースはよくあるの』 【あたいが良いって拓也が言った】って…あの彼女はあなたの彼女なんでしょ?『まぁた、思い詰めてるっ!1人で考えて空回りしてる感じにしか見えないわ。けど好きな人の気持ちほどこわいものはないもんね、告白して玉砕ってケースもあるから』 あの彼女が彼女なんだもん…私なんて告白以前の玉砕だもん… 『なんて顔してるの(苦笑)温泉楽しかった?』 『はいっ散歩して温泉入って、たくさん食べて、ゴロゴロして、アーチで遊んで…楽しかったですっ!』 『プッ、あはははっ。表現力が良いわ!楽しい!そういう感性あるみたいね、ホテルでもカーテン生地に頬擦りしたりして(笑)あぁ、拓也に教えてあげよう』 『感性が違うって松本さんにも言われました、変わった娘(こ)だって』 『やっぱり拓也も!』 不意に佳那子はK出版で見た美和のアホ面を思い出し笑い続けた。 『渋滞で良かったわ、ハンドルが持てない~』 『佳那子さん?』 『画面では拓也も苦笑しながら美和ちゃんの手を掴んで促してたわね。聞くところによると出版社のロゴマークを見てあんなアホ面を…ごめんっ!』 『アホ面…』 『拓也にはあなたは癒しね、あなたがいれば拓也は拓也でいられる』 『佳那子さん…』 『過去の笑わない拓也を知る姉だからこそ言えるのよ、美和ちゃんは癒しよ』 『癒し?私が?危なっかしい、ハラハラする…って松本さんから言われます。癒しなんて…』 『拓也の嫌いなところある?』 『さ、最初は大嫌いでした。哀れむような同情のような目が嫌で、2度目の再会にかつおぶしの匂いにつられた飼い猫のミロに【噛みなさいよ】って言ってみたり』 『あはははは!あなたって最高に面白いわ、続けて』『(苦笑)でも、松本さんは私が困ってるといつも助けてくれたり。だから、出会ったのが秋で秋の終わり頃?冬に差し掛かる頃には嫌いな感情もなくなってました。松本さんには嫌いなところは見つからない』 『拓也に聞かせてあげたいわ、良い娘(こ)ね』 『噛みなさいよって松本さんに向けて、ミロに言っても良い娘(こ)ですか?』 『あはははは!お互い初対面に近いんだから(笑)仕方ないわよ(笑)ミロは?』 『松本さんの匂いにつられすりよりました』
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