《第8章・まっすぐに…》

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りんごパイとレモンチョコパイを家用にも買っていて、『旨い』と好評。松本さん喜んでくれるかな?また考えてる… 『美和、昨日届いてたのよ』 転校するなら9月からが良いとパンフレットだけ取り寄せた、寮生活になる学校!書き込みのせいで居づらくなった今の学校、好奇の目で見られるのはもう耐えられない。 寮に入るとマンションのみんなには会えなくなる。 松本さんにも会えなくなるけどそれで良いよね? 携帯をそのままにしていた為に着信があったみたい。松本さんから3回、あの彼女から2回。 一方、松本は。 『さっきまで繋がってたのに美和また電源を切ってる、あのデブ女からまだ電話かかるの?話しも出来ないじゃない!』 『拓也イライラするのもわかるけど、美和ちゃんから拓也にお土産預かってるわよ。あたしももらっちゃった』 『お土産?』 ビールを佳那子に渡し拓也もビールを開けソファーに座る。 『グラス!この柄は…』 『半分アーチ柄が付いてんのね、美和ちゃんらしい』『もう仲良くなったんだ?』 『妬かないのよ、拓也』 『姉貴も智行もあたしがやりたい事を先に実行してる、悔しくて』 『智行!?』 『何?何でビックリしてんの?知ってるの?』 『ううん…』 佳那子は苦笑した、拓也は智行を知ってるのね。 拓也はビールを飲み空にし台所に放って、美和のお土産のグラスを洗ってカクテルを注いだ。 『レモンチョコパイも拓也にって』 『グラスもお菓子も嬉しいけど、直接…直接渡してくれたら良いのに…美和のバカ…』 『まぁまぁシュークリームももらってるから』 『姉貴は美和とお風呂に入ったんだ?美和の裸を見たんだ?美和と一緒に2人っきりの旅をしたんだ。 あたしより先に裸を見たんだ…』 悔しそうにグラスからカクテルを飲みうなだれる拓也。 『話しも出来ない、顔も見れない、抱き締める事も出来ない今…余計にうやらましいのよ』 怒鳴るよりささやくようなせつない声で言われると佳那子も黙り込む。 『本気なんだ…拓也…』 拓也の為にも何とかしてあげないとね…、佳那子はビールを飲みながら拓也を見ていた。 『アーチを拓也だと想ってポーズをとって、と頼むと美和はあんなかわいいポーズをしたのよ。元気を出して!』 拓也はせつない顔でグラスを眺めた。 かわいいポーズ… たしかに可愛かった… 俺のかわいい美和… どうしたら前みたいに笑ってくれる?
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