《第8章・まっすぐに…》

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室内設置の金庫に貴重品を入れ、佳那子さんと私は女湯へと向かった。部屋であらかじめ私服からホテルの浴衣に着替え、室内履きで廊下を歩く。 ドアを開けると温泉の匂いがして、どことなくお泊まり感がして誰かとお風呂なんて未知の体験にドキドキした。 私の横に佳那子さんがいてタオルを巻いただけになってた、早っ。 ニヤニヤしながら佳那子さんが『脱がないの?』って、恥ずかしそうに浴衣を脱ぎかけると佳那子さんは後ろを向いててくれた。 『スタイリストやってると着替えも堂々とやる姿を見てるから、恥ずかしがる美和ちゃんは新鮮だわ』 カシャッ! 『お土産画像』 『佳那子さ~ん』 『美和ちゃん隣に来なさいよ』 佳那子さんから離れ、隅っこに行き恥ずかしそうに髪を洗い始めた。 隣に誰か… 『つれないわねぇ』 『佳那子さ~ん』 バタバタのお風呂体験をしタオルで体をおおうと安心した。 佳那子さんは浴衣を着始めていた。あぁ私も… 『お風呂上がりお土産画像っと』 『佳那子さ~ん』 私が浴衣を着るまで、そうは言っても後ろを向いててくれる佳那子さん。 ご当地ならではの食材の贅を尽くした和食を室内でいただく、佳那子さんはビールも。 ロビー横でお土産物を見てかごにいくつか入れて、袋いっぱい買ってエレベーターを待っていた。 『書き込みの人?』 不意に声がして私は佳那子さんの側に寄った。 『書き込み?さぁ誰かしら?サッサと部屋に帰りなさい』 男も場所が場所なんでそれ以上は言わずスゴスゴと男湯のある方に去って行った。私は部屋に入るまで佳那子さんにしがみついていた。 『コアラのようね(笑)もう部屋に入ったから安心して良いわ』 恐る恐る顔をあげ佳那子さんを見上げる。 『拓也がたまらないのはコレなのね(笑)』 『えっ?』 『なんでもないっ』 私は買ったお土産の中からカーテンの柄と一緒の赤いリボン付きのポーチ・リンゴパイの菓子折りを佳那子さんに渡した。 『あたしに?』 『連れてきてもらったお礼です』 『美和ちゃ~ん、なんてかわいい事するのかしら』 『大人な佳那子さんには幼稚かも…ひゃあ』 佳那子さんは私をハグして背中を撫でてくる。 似てるかもしれない… 『拓也の言うとおりね、本当に』 ハグの後、買ったお土産の行き先を説明し始めると佳那子さんはまた笑った。 『お土産の行き先って(笑)おかし過ぎるぅ~』 こんなところも似てるのか? 『拓也に?』
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