第1章

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木々の間に細く続く、土がむき出しの道の奥に、その別荘はあった。 樹木に囲まれ、自然の中に存在する2階建ての大きな建物は、年数を重ねているのだろうが、こまめに手入れをされているようで、かえって重厚感を漂わせている。 周囲や別荘の窓などに気を配りながらゆっくりと近づいていったが、人の気配はまるで感じなかった。 「やはり空振りかな」 そうつぶやきながら建物の玄関に近づき、そのドアを引いてみたが、当然鍵がかかっていて開くことはできなかった。 しかし、このまま帰るわけにはいかない。 ここまで来たからには中も確認しないことにはすっきりとしない。 建物の周囲をぐるりとまわりながら、鍵のかかっていない窓はないかと手の届く範囲で試してみた。 だめだったら、木に登って2階の窓も見てみようと思っていた。 がたがたと窓枠を揺らしながらうろうろしている俺は、とても怪しく映っていることだろう。道路からは少し奥の場所にあるため、通りかがりの車には見つかることはないが、やはり気が急いた。 裏にまわったところで、勝手口のようなドアがあった。 当然開かないだろうと思いつつもドアノブに手をかけてまわすと、スっとドアが開いて驚いた。 「無用心だな」 それとも、入って来いということだろうか。 俺は用心しながら、ゆっくりと中に入って、あたりを見回した。 そこは広い台所で、調理器具や棚の中の食器などが充分にそろえられていた。 よく見るとそのどこにもほこりは積もっておらず、きれいに掃除されている。台所の様子からも、別荘というより、通常の暮らしで使用されているように感じた。 その台所を出て、一つ一つの部屋を、音をたてないように見てまわった。 万が一、人がどこかにいたとしても、気づかれないようにしなければいけない。 この別荘の大きさや部屋数、調度品などからみても、東条家は裕福であったことが伺える。 全ての部屋の、人が入れそうな場所は、クローゼットの中やベッドの下なども見た。 菜月の無事な姿だけを想像して探した。そうしなければ、冷静さを失ってしまいそうだった。
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