第1章

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視線を戻して紋章を見た。 もしや、と思い、その竜の紋章部分を指で押してみた。 思ったとおり、それは重い抵抗があったが、奥へと沈んでいった。 そしてすぐ、低い機械音が床下から聞こえ、小さな振動が足元に響いた。 それとともに、暖炉の中の床下が右へとずれていき、薪が右の側面にあたるかどうかのところで止まった。 目をみはって、下を覗き込むと、暗闇の地下へと階段が続いていた。左の側面も競り上がって下りやすくなっている。 「こんな仕組みだったなんて……」 ここは竜神の会の拠点に違いない。 俺は意を決してその階段へと足を踏み入れた。 目をこらすとその地下への階段の先にうっすらと明かりが漏れているのが見える。 誰か、いる。 菜月であることを願い、俺ははやる気持ちを抑えながら、音をたてないようにゆっくりと階段を下りていった。
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