第1章

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「…イチ?」 「何してるの、こんなとこで?」 「ああ…何してんだろうな、俺…」 手袋もしないで鎖を握っていたから、すっかり冷たくなってしまった手。 鎖から外して両手をそろえて、正面にもってくる。 そのまま屈んでそっと息をかけて擦った。 「すっかり冷たくなってんじゃん」 「冬だからな」 「わかってんなら、手袋くらいしなよ」 少しでも暖かくなるように、擦る。 「イチ」 「ん?」 ホントはさ。 どうしてこんなとこに居んのとか、何でそんな顔してんのとか、いつからいたのとか、何やってんのとか。 質問攻めにしたい。 そんで、もうこんなことないように、オレが何とかしてあげられたらいいなと思う。 すいっと、ふぅちゃんがオレの手の中から手を引いた。 屈んだ姿勢からふぅちゃんの顔を見たら、にやりと微笑んで、ふぅちゃんはいきなりオレの首筋にその両手を当てた。 「ほわっ?!」 「あー…あったけー」 「つつつつつつ、冷たっ!ふぅちゃん、ものっそ冷たいよ!」 ひゃってした! ひゃってした! あわあわしてるオレを楽しそうに見ながら、ふぅちゃんはその手を離さない。 「おー。感覚なかったからな」 「なんでそんなことしてんの」 「別に」 「っていうか、何いきなり?!」 「お前、あったかそうだったから」
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