第1章

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「じゃ、渡したからな」 それだけ言って、すたすたと歩いて行ってしまおうとする。 「ちょ、待ってよ」 その腕を引き寄せて、抱き込んだ。 見たことのなかった、途方に暮れた顔。 聞いたことのないくらいに、不安定な言葉。 ねえ、何をどうしてそんなに怖がってるの? オレは揺らがないのに。 「離せ」 「やだ」 「イチ、離せよ」 「絶対に離さないから」 オレの腕の中でふぅちゃんは小さくため息をつく。 しょうがねえなぁって、言いたそうに。 「知ってるよ」 「ふぅちゃん?」 「お前がすっぽんみたいに俺に食いついて離れないのなんて、とうの昔から知ってるし解ってんだよ」 それでも。 それだから。 絶対にオレに顔を見られてなるものかって態度で、ふぅちゃんはホントに小さく呟いた。 それが絶対だと思ってる自分が、嫌なんだよ
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