第一章

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それを頼りに集団は、大きな空間を抜けていく。そして、とある水路に入る。その水路は大きく、一列に並ばなくても屈まなくても歩くことができた。 その水路を少し進み、またべつのちいさな水路に入る。そしてまたべつの水路に、べつの水路に……。それをどれ程したのかあやふやになってきた頃に、先頭がある小さな水路の途中で止まった。 壁を何度か叩いて、かなりの強い力でその壁を押す。すると、内側に壁の一部が押し込まれた。それはドアで、人一人がやっと通れるほどの丸い穴。 中は、ごくごく普通の部屋のようになり、オレンジ色灯りが部屋を照らしていた。 集団は、静かに部屋のなかに入り、部屋のなかを見渡す。この部屋こそ、目的地だったとある一室のひと部屋だ。 全員がなかに入り、扉である壁をもとの位置に戻す。それから、なんの一言もなく奥へと進む。 「……誰だ?」 集団が次の部屋に入ったところで、さらに奥から声がした。男の声だ。 「……イチです。リーダーにご相談があり来ました。」 先頭を歩いていたイチと名乗った男が、声のもとへ足を進め、声の主を見つけた。 声の主であるリーダーと呼ばれた男は、ラフな部屋着で足元は素足だった。見た目は30後半くらいで、がたいの良い身体で、髪は茶色の短め。首に横に傷があるのが目につく。 昔馴染みにつけられた傷だと、前に聞いたことのあるイチは、口では言わないが相手にそれなりに尊敬を抱いていた。 下克上などと考えていないが、自分の上にいる相手に、一生治らない傷を負わせるほどのその実力に憧れないやつはいないだろう。 男のあとを追い、男が普段リビングとして使っている部屋に入った。先程まで居たのは、玄関または客間として利用している部屋だ。 「―――あれ、イチくんじゃん。どうしたの?」 イチが部屋に入った途端に声をかけられた。女の声で高すぎないが、ハスキーでもない高さの声。 その声に反応したのは呼ばれたイチではなく、その後ろに居た集団だった。
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