第1章

3/8
154人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
「あ、っ」 俺が全寮制の男子高の教師なんてやってるもんだから自分も寮住まい。 そんな中で俺には恋人がいる。 なかなか会えないが、週末だけは2人で借りた部屋に戻ってくる。 相手も相手で俺がいま勤務している高校の理事長だったりしちゃうわけだから余計に都合が合わない。 一緒の所で働いているとはいえ、理事長とはほとんど会う機会なんて、ない。 それでも少しでも会いたくて、ふらっと平日の夜に帰ってきてしまったのだ。 明日は始発で出なければいけないと分かっていても。 理事長は学園よりも外の方が多いからよく2人で借りた部屋に帰っている。 今日も部屋に帰ってきていることは知っていた。 だが、おかしい。 部屋に入ると靴が二足あるではないか。 それに、なにやら怪しげな声が聞こえた…ような気がする。 少しづつ、寝室へと続くドアへと近づく。 ミシッミシッと鳴るフローリングが耳障りに感じた。 「あ、んんっ…羽柴さ…」 羽柴、とは俺の恋人だ。 説明し忘れていたが、男子高の理事長というので分かってくれていたかもしれないが俺の恋人は男だ。 高校からの同級生だったりしちゃうわけなんだけども。 やはり、あの最初に聞いた怪しげな声は気のせいではないようだ。 女にしては低い声。 相手は男なんだろう。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!