2章

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準備室に戻れば出迎えてくれるのは書類が散らばった汚い机と煙草の煙がこもって若干視界が白い部屋。 ああ、やっぱりここは重宝すべき場所だなぁなんて改めて思う。 怜以外、誰も寄らないこの場所は怜にとって、自分だけの城なのだ。 「窓だけでも開けないとやべぇなぁこれ。煙草の煙でなんか視界が白っぽいわ」 とは口に出して言うも、窓まで歩くのが面倒なのか、いつもの定位置である椅子へと腰掛けた。背もたれに体重を掛ければ古びた椅子はギシっとよろしくない音を立てる。 煙草の箱を取り出し、一本取り出す。 ライターで火を付け、肺に煙を命一杯取り込む。 ふぅーと吐き出せば取り込んだ煙が外へと逃げた。 「やぁーっと煙草が吸えた。あー、うめぇなぁ」 なんだか、やっと気が抜けれた。 いつから緊張状態だったっけ? ああ、いや、理事長室に行くってなってからかな。 透に会ってからかな。 透のことを思い出して、ずーんと暗くなってしまう。 いやいや、さっき橘とのやりとりで透を無理に忘れなくてもいいと思ったばかりじゃないか。 「自然と忘れるにはやっぱり時間の問題なのかねぇ」 「それは俺のことか?」 突如聞こえた声に怜は大げさに驚いてしまう。 扉の開く音も聞こえないほど考えに没頭してしまっていたようだ。 それに、独り言もばっちり聞かれてしまった。 怜はそのまま椅子の背もたれに体重を更にかける。 椅子はぎしぎしっと音を出して悲鳴を上げている。 背もたれはしなり、そのまま後ろにいる人物を見やる。 「っ!!」 怜は思わずそのまま椅子から転げ落ちそうになってしまった。 逆さから見た人物は先ほどまで考えていた人物。 羽柴透その人であった。 「理事長?なんでこんなとこに.....」 慌てて居住まいを正し、透に向き合う。 心臓が煩いぐらい音を立てている。 顔に出ていないだろうかと心配になった。 「怜、そんな風に呼ぶな」 「え.....」 "理事長"と呼ばれたくはないのだろうが、今の自分には透と呼ぶ資格がないじゃないか。 恋人でもなければ、友達でもないだろう。 ただの"一教師"と"理事長"だ。 だからさ、そんな辛そうな顔でそんなこと言わないでくれ。
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