第1章

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出た。 恋人のこのよく分からない俺様。 ああ、懐かしいな。 最初はこの俺様で半ば強引に付き合わされたんだよ、俺。 それがいつしか愛しいと、そう思うようになっていたのに。 いまはそれが憎いぐらいだ。 「お前が俺から別れられると思っているのか?」 その言葉に笑う。 それは綺麗に。 「透は、俺が別れられないとでも、思ってんの?」 ああ、別れたくなんかなかったさ。 ずっと一緒にいるもんだと思ってたさ。 でも、それは今日この部屋に入るまでなんだよ、透。 「俺は、お前なんかいらないよ。」 「…あ、ご、ごめんなさ…」 か細い声が耳を掠めた。 ぽろぽろと大きな瞳から涙を零す透と寝ていた男。 「ぼ、僕が…羽柴さんに抱いてって言ったから…好きだったから…っ!」 それが理由になる、とでも? 理由はどうあれ、断ることをしなかったのは透だ。 そしてこうなるかもしれないことをこの少年も分かっていなかったわけじゃないだろう。 「理由はどうあれ、もうこれまで通りには出来ないだろ?俺もこれまで通り、なんて無理だ。いずれ別れる。それが早かっただけ」 ゆっくりと2人に近付く。 透の表情はどこか硬い。 「こ れ あげる」 チャリっと音を立ててポケットから出した物はこの部屋の鍵だ。 それを少年の手を無理矢理開かせて手のひらに置いた。 怜は笑う。 それは、綺麗に笑う。 いまから別れを告げようとする顔ではなかった。 「この家の鍵。これからは君のもんだよ。お幸せに」 「あ…」 少年は惚けたように怜の笑顔から目を逸らせずにいた。
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