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スっと下から此方に手が伸びてくる。
「は……?うぉっ!」
珍しく手を掴んでくるのかと思いきや、腕を強く引っ張られ、俺は下に落下した。柔い絨毯があっただけ救われた。鮫島は怪力の持ち主なのだ。俺は到底敵いっこない。どうしても勝てないのである。
力だけではない、俺は頭も悪く、上手いことも言えない。口喧嘩をしても、勝てたことがない。容姿も身長も勝てない。
「寝る。お前も寝ろ」
ボソリと呟いた鮫島が、一緒に落ちた毛布で俺と自分を包み込む。なんて横暴な奴なのか。未だに横暴の正しい意味は知らないが、恐らく、これで合っている筈だ。
目を瞑った奴の顔を恨みを込めてジッと見つめてみたが、目を開ける気配は無い。こうなってしまっては、俺も目を瞑るしかない。
そう思った瞬間だった。
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