第1章

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コノノとは約束だから、泳げるようにしてあげるよ。』 「ありがとう!ジャンプもしたい!」 『うん。教えよう。でもまずはね。』 「歌だよね?」 『さすがは親友だ。よく解っているね。歌はね どこで覚えることも作ることも出来るんだけれど、 コノノが歌いたい歌は……きっと、陸にあるよ。』 「どういう風に落ちてるの?木の実みたいに?」 『違うんだ。陸には町というコノノとよく似た人が 沢山いるんだ。僕等はあまり近づけない掟だけどね。 港や桟橋で、夕暮れに歌う人もいるのさ。けれど。』 「けれど……?」 『踊りたい歌もあれば、眠りたい歌もあるのだから 困ってしまうんだ。コノノならさっきのジャンプで 踊りたい歌を見つけて覚えてこれるよ。』 「……わかった。行ってみる。トルトまた会える?」 『海があれば、いつでも呼べばいい。』 「町……。あのねトルト。あと1つ教えて。」 『なんだい?』 「お父様は町にいるの?」 『僕の父上は海にいるけど。コノノのお父さんの事は 知らないんだ。ごめん。探せばいるはずだよ。でも。』 「でも?」 『本当に会いたいのかい?』 「判らないの。世界に来た事が無かったから。」 『よし、これをあげよう。』  奇麗な真っ白な、穴の空いた貝殻で出来ている。 『トルトのオカリナだ。僕等、イルカ達はその音を お日様が昇っていても、お月様が照らしていても。 決して聞き逃さない。歌を覚えるのに便利だと思う。』 「ありがとう……。大切にするね。」 『僕を呼ぶのにオカリナを吹く必要は無いけれど、 【きっと役に立つ歌】を教えてあげる。簡単さ。』  トルト達は、コノノを陸の岩陰に運んでくれて、 静かにその歌を歌ってくれました。私は歌をどう描けば 地図に出来るのか解らなくて。  急いでオカリナで覚えました。頑張ってお勉強です。 短くてトルトっぽくない静かな、風のような雲みたいな そういう歌でした。そしてトルトが言いました。 『行っておいで。コノノ。僕等もコノノの話と歌を 楽しみに待ってる。そのとき泳ごう。海の底まで。』 「ありがとう。でも、少しだけ怖い。」 『平気。』  イデアがスゥっとオレンジに光って浮かびます。 『夕方になりそうだね。夜になる前に町へ行くんだ。』  イデアが、引っ張るように先へ行きます。 町への道を知っているの?知ってるんだ。イデアは。 「トルトと皆、ありがとう。またね!」
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