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恐る恐る視線を落とすと、腕の中にいた幼い弟――蓮(れん)が今にも泣きそうな瞳で、縋るようにぼくを見つめていた。
瞬間、死にたくなるような罪悪感に、目頭が急激に熱くなる。
蓮の瞳にはぼくと同じものがあって……見ていると堪らない気持ちになった。
――忘れてしまっていた。
ぼくが守らなければいけないのに、この子を一人にしてしまっていた。
ごめん……っ。
蓮を固く抱きしめ、震える唇を動かす。
「大丈夫……」
何がーー?
同時にそんな言葉まで飛び出しそうになって、ぐっと飲み込んだ。
苦しさに噎せそうになるのを、血が滲むくらい強く唇を噛んで耐える。
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