【7】

7/22

1899人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
さとの纏う空気が、何だか甘ったるくてむず痒い。いつもと全然違う雰囲気に、どこか気恥ずかしささえも感じてしまう こんな風に触ってくるくせに、そんな目で見るくせに俺が触ると嫌がるんだから、何だかおかしくてつい口元が緩んだ こんなにもわかりやすかったのに、俺は何で今まで気付かなかったんだろう 俺はさとの方へゆっくりと手を伸ばす。するりと頬をすり抜け、そのまま首に手を回すと、勢いよく自分の方へとさとの身体を引き寄せた 「うわっ……ちょっ、おいっ……!」 「うーん、もうちょい寝かせて」 「お前起きてっ……!」 「うん。俺の髪、触り心地よかった?」 「……っ、うるさい」 ああ、やっぱりそうか。俺の行動で、さとはこんなにも取り乱す。狼狽える 今まで見てきたさとの言動も、行動も、表情一つ一つが、角度を変えるだけで全然違うものに見えてきて 触れた部分に微かだが、紛れもない熱を感じた ドクンッ、ドクンッと大きく鳴り響くこの鼓動は、どちらのものだろう。それがわからなくなるくらい、実を言うと、俺も結構狼狽えている だって、まさか、本当に……? 初めて知った事実に、驚く気持ちで俺の胸は張り裂けそうな程いっぱいになった でも俺の胸の中で、離れようと必死にもがくさとの姿を見ると、多分、本当なんだろうなと思うんだ 薄っすらと紅色に色付く肌も、布越しでもわかるこの確かな熱も、俺の鼓動と同調するこの速い鼓動も 俺が、そうさせてるんだよな。俺だから、こんな風になってくれてるんだよな もっと、もっと近付いたら……ただでさえ赤く色付く顔は、どんな風になるんだろう それが、どうしようもなく気になって 好奇心なのか何なのか、自分でもよくわからないまま、俺は覗き込むようにしてそっと顔を近付けた 「なっ、んで、顔近付けてんだよっ」 「うーん、よく見えなかったから?」 「お前、視力両方ともいいだろうが。てか、離せって」 「まあまあ、もうちょっとだけ」 「……遅刻するぞ」 至近距離に近付けば近付く程に、さとの顔は今にも沸騰しそうな程に赤くなる。耳だって、こんなに。この反応は、きっと、間違いない まるで発火するみたいに赤く染まる顔、首筋、嫌がる言動とは裏腹な表情 ……そっか さとって、俺の事が好きだったのか
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1899人が本棚に入れています
本棚に追加