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さとの纏う空気が、何だか甘ったるくてむず痒い。いつもと全然違う雰囲気に、どこか気恥ずかしささえも感じてしまう
こんな風に触ってくるくせに、そんな目で見るくせに俺が触ると嫌がるんだから、何だかおかしくてつい口元が緩んだ
こんなにもわかりやすかったのに、俺は何で今まで気付かなかったんだろう
俺はさとの方へゆっくりと手を伸ばす。するりと頬をすり抜け、そのまま首に手を回すと、勢いよく自分の方へとさとの身体を引き寄せた
「うわっ……ちょっ、おいっ……!」
「うーん、もうちょい寝かせて」
「お前起きてっ……!」
「うん。俺の髪、触り心地よかった?」
「……っ、うるさい」
ああ、やっぱりそうか。俺の行動で、さとはこんなにも取り乱す。狼狽える
今まで見てきたさとの言動も、行動も、表情一つ一つが、角度を変えるだけで全然違うものに見えてきて
触れた部分に微かだが、紛れもない熱を感じた
ドクンッ、ドクンッと大きく鳴り響くこの鼓動は、どちらのものだろう。それがわからなくなるくらい、実を言うと、俺も結構狼狽えている
だって、まさか、本当に……?
初めて知った事実に、驚く気持ちで俺の胸は張り裂けそうな程いっぱいになった
でも俺の胸の中で、離れようと必死にもがくさとの姿を見ると、多分、本当なんだろうなと思うんだ
薄っすらと紅色に色付く肌も、布越しでもわかるこの確かな熱も、俺の鼓動と同調するこの速い鼓動も
俺が、そうさせてるんだよな。俺だから、こんな風になってくれてるんだよな
もっと、もっと近付いたら……ただでさえ赤く色付く顔は、どんな風になるんだろう
それが、どうしようもなく気になって
好奇心なのか何なのか、自分でもよくわからないまま、俺は覗き込むようにしてそっと顔を近付けた
「なっ、んで、顔近付けてんだよっ」
「うーん、よく見えなかったから?」
「お前、視力両方ともいいだろうが。てか、離せって」
「まあまあ、もうちょっとだけ」
「……遅刻するぞ」
至近距離に近付けば近付く程に、さとの顔は今にも沸騰しそうな程に赤くなる。耳だって、こんなに。この反応は、きっと、間違いない
まるで発火するみたいに赤く染まる顔、首筋、嫌がる言動とは裏腹な表情
……そっか
さとって、俺の事が好きだったのか
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