【7】

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今日はサークルの飲み会がある。俺は大学の授業が終わった後、一度家に帰り荷物を置いてから飲み会の会場である飲み屋に向かった 思いの外早く店に着いた俺は、親しい友人達がまだ来ていない事を確認してまだ誰も座っていない席にとりあえず腰を下ろした 何気なくメニュー表を眺めていると、5分と経たずに同じ学部の友達がやって来た。それから他の人達も続々と集まってきて、始まる前から辺りは既にお祭りムードになっていた 「おーい、上島っ、こっちこっち」 不意に、同じテーブルに座った友達がさとの名前を呼んだ。俺はさとの名前を聞いた瞬間小さく肩を揺らすも、何事もなかったみたいに振る舞う 後輩の子に告白されて以降、さとの事を考える時間が増えたように思う。意識をしていないかと聞かれれば、正直してないとは言い切れない こんなにも相手に意識されてたら、尚更だ 俺がメニュー表を渡せば、さとはおずおずとそれを受け取って直ぐに視線を逸らした 他の奴から見れば、さとの行動は特に何でもない普通の行動でしかなかったんだろうけど、俺の目線だとちょっと違う 何かを噛み締めるみたいに、嬉しそうなのを堪えてるみたいに見えた。そんな表情されたら、不覚にもドキッとしてしまう。その事がなんだか気恥ずかしくて、俺もそっと視線を逸らした 飲み会は予定通りの時間から始まった。近くの人と乾杯をして、各々談笑する。俺も隣に座った友達と話をしていたけど、さっきからずっと気になっている事があった 事あるごとに、さとから熱い視線が注がれてる。俺はその視線に気付く度に、ことごとくさとへと意識を持っていかれていた いつも以上に熱を帯びた視線に、何も言われてないのに好きだと言われたみたいに錯覚した。見られただけなのに、触れてもいないのにその熱が伝わってくるのが嫌だ ……その熱に引き摺られて、体温が上昇するのも 強く想われて悪い気はしないんだけど、そんな目で見られると動揺するのも事実で あーもう、なんでそんな、俺の事好きなの そんな目で見ないで欲しい。俺を全身で好きだと言うのを、やめて欲しい。俺は、このままで居たいっていうのに さとの想いの強さに呼応する様に心臓の鼓動が加速を増した。俺はその事に気付かない振りをして、ジョッキに残っていたビールを一気に飲み干した
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