【7】

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ーーそれは、あまりにも突然の出来事だった 「俺、とか、どう?」 「え……?」 飲み会も進み、各々自分が座っていた席を離れて正に無礼講といった感じで和やかに飲んでいた 俺の隣には同じ学部で同じサークルの、しかし話をした事は殆どない男が座った そいつは座るなり、この間男から告白されてただろうと嫌な笑みを浮かべながら俺に聞いてきた どうやら後輩から告白される所を見られていたらしい。その事を大声で言われたもんだから、俺達は途端に注目の的となった その後もその事について色々と言われ、後輩の子の気持ちを軽視する様な物言いに、俺はだんだんと隣の奴に対して苛立ちを募らせた とうとう我慢出来なくなった俺は、あんたには関係ないだろうと強く言い放った。楽しかった筈の飲み会。それなのに、俺がその楽しい空気をめちゃくちゃにしてしまった 俺がこのままここに居ると、きっと悪い空気が流れたままになる。そう感じた俺は、ごめんと告げて一足先に店を出た そんな俺の背後から、俺の名前を呼ぶ声がした。振り返れば、そこにはさとが立っていて 慌てて追いかけてきてくれたんだろう。少し息が荒い でも追いかけてきておいて俺にかける言葉が思い当たらないのか、しどろもどろになって狼狽えるさと 俺の事を本気で心配してくれてるのが伝わってきて、胸が熱くなった。そんなさとを見てると、苛立った感情が少しずつ消えていくのを感じて、俺は自然と笑みを零していた さとが追いかけてきてくれたのが嬉しかったから、俺は直ぐ近くに見える公園でコーヒーでも飲まないかと誘った。誘ったのは本当に何となくで、特に何か話がしたいとかそういう事ではなかった ただ、さとと居ると落ち着くっていうか、安心出来るっていうか。さとと居ると、このまま苛々とした感情なんて、どこかに行ってしまう気がしたんだ
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