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さとを見たという話を頼りにたどり着いた場所は、人通りの少ない裏庭の奥。こんな所に本当にさとが居るのかと疑問に感じたが、今頼りになるのはさとがこっちに歩いてくのを見かけたって言葉だけだった
俺が不安を抱きながらも辺りを見回してみると、俺の先を歩く一人の後ろ姿が目に飛び込んできた
淡い水色の洋服に身を包み、ストレートの黒髪を風になびかせながら歩く背中。俺はその後ろ姿を見て、自然と笑みを零していた
ああ、間違いない。あれはさとだ
何でこんな所に居るんだとか、そんな事が頭の中に浮かんでは消えていく
気が付くと俺は勢いよく走り出していた。頭で考えるよりも先に身体の方が動いて、目の前にある背中に手を伸ばす。やっと、やっと会えた
「さとっ……、やっと見付けたっ」
俺がさとの肩を掴みこちらを振り向かせると、一番最初に視界に入ってきたのは酷く驚いた顔だった
さとの口が、自然とどうして、と形を作る。俺はそれに答える様にさとを捜してたんだと告げた。その時、俺は無意識にさとの腕を掴んでいた。まるで、逃がさないと言わんばかりに力を込めて
そのままさとに今日遊べないのかって聞いてみたけど、予想通り返事はノーだ。じゃあ明日はと聞くと、これまた予想通りの答えが返ってきた
「あー、えっと、明日は泊まりに行く約束してるんだよ」
「……それって、昨日も泊まりに行ってたんじゃねえの?」
「あ、ああ。一緒に課題やるって約束しててさ」
俺は返ってきた言葉に、瞬時に眉を寄せた。モヤモヤとした感情が、俺の中で少しずつ大きくなっていく
課題だって確かにあるだろうけど、それって泊まりに行かないと出来ないものなのか?俺が家に遊びに行った時、家でやってたじゃん。家じゃ出来ねえの?それに、さっきから視線が噛み合わないのは何で?
「なんか、さ、俺ってもしかして……避けられてる?」
「……っ……」
「あの飲み会の日、俺、なんか変な事言った?あの日からだったよな。会えなくなったの」
「し、てない。たまたま、タイミング悪かっただけだろ」
「タイミングって、最後に会った一週間前だろ!?こんな会わない事なんて、今まで無かったじゃんっ!これまで、毎日の様に一緒に居たのに……っ」
あんなに一緒に居たのに、それでもこれは避けてる訳じゃないって言うのかよ
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