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また、見られてる、気がする
俺は恋人という特権を活かして、その日からさとの家に泊まり込むようになった。自分用の布団を調達して、家から私物を持ち込んで
最初は帰れと言っていたさとも、一週間もすれば何も言わなくなった
それと同じくして、あの光線みたいに強烈な視線が、再び俺に向けられるようになった
さとが風呂に入ってる間、俺はソファーに座って学校で出された課題をやっていた。暫くの間パソコンと睨めっこをしていると、何となく、誰かから見られてるような視線を感じて動きを止めた
まあ、誰かって言ったって、視線を向けてくる相手なんてここには一人しか居ないんだけど
俺は完全に手を止めて視線を感じた方に顔を向ける。すると予想通り、風呂上りのさとが廊下と部屋を仕切るドアの前に立っていた。ジッと、こちらを見つめて
俺が視線を合わせれば、さとは噛み合った視線に驚きの表情を見せた。そのまま狼狽えるみたいに目を泳がせた後で、気まずそうに視線を逸らす
「どうした?そんな所に突っ立って」
「あー、いや、何でもない」
「そ?だったらいいけど。じゃあ俺も入ってくるかなー」
「課題、終わりそうなのか?」
「いんや。提出日明後日だし、続きは明日バイト行く前にやるよ」
俺はそう言ってパソコンを閉じると、タオルと着替えを持ってさとの隣をすり抜けて行く。俺が脱衣所に入る瞬間、また、さとが俺を見ている事に気が付いた
さっきは逸らしたくせに、なんで俺、また見られてんだろ
その視線は、前に受けていた視線と同様の熱を帯びている気がする。目だけで好きだと言われてるみたいな、そんな視線
痛い程の強い視線を背中に受けながら後ろ手で脱衣所のドアを閉める。自分しか居ない密室空間で大袈裟に息を吐き出して、そっとドアに凭れかかった
さとは俺の事が好きな訳じゃないって、もうわかった筈なのに。それでもそれを熱の込められた視線だと思うなんて
「……自意識過剰過ぎんだろ」
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