【8】

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一緒に過ごすようになって10日が過ぎる頃、さとの中で何かが変わってきている事に気が付いた 最近、さとはなんだか危ういというか、無防備だ 「さとー、ご飯まだ?」 「あー、もうちょっとだから大人しくしてろ」 「ちょっとだけ味見させて」 「……っ……!」 前だったら俺が触れる前に手を払い退けていたのに、今はこんなにも簡単に触れられる 今まで俺達の間には一定の距離感が存在していたのに、触れるなって言わんばかりに見えないバリアみたいなものが張られていたのに、今は全くそれを感じない それをいい事に、俺はさととの距離を少しずつ縮めている。振り払われないからって、嬉しくてついスキンシップが激しくなる 今までの事は一体何だったんだろうってくらいに容易く触れられるから、もしかして、触れちゃいけないっていう理由が無くなったって事なんだろうか じゃあ、俺が今試そうって言ったら、素直に触れさせてくれるんだろうか 恋人になったからと言っても、特にこれといって恋人らしい事はしていない。試すなら俺でと言ったけど、具体的にどうすれば試す事になるのかもよくわからないし、さとはさとで何も言ってこない これじゃあ親友の時と何ら変わらない。でも、変わらないままでも居られないんだ。恋人になるって、言った以上は 直接聞いてみようかな……さとに 俺がもしあの日、OKしてたらどうしてたのかって 試すって、具体的に何をすればいいんだろう。やっぱり一番手っ取り早いのはキスかな。だって親友同士でキスなんて、普通はしないし だからこそ、キスという行為は試すにはうってつけかも知れない キス……か 俺……幼馴染みと、男と、キス出来んのかな その時、不意に、さとが同性である事を強く感じた。今までは付き合っていてもどこか親友の延長線上だったから、男同士だと強く意識する事は無かったけど 親友同士でキスなんてしないと思う。それが男同士なら、きっと、もっとしないんだろう ああ、そうだった。俺は男で、さとも男だ でも何となく、さととならキスくらい余裕で出来そうだと思った。そう思った時点で、さとも俺の恋愛対象の中に入るって事なんだろうか
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