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試すだけ。さとが、男が平気かどうか。ほんの少し触れ合ってみて、さとの恋愛対象が異性なのか同性なのかを確かめるだけだ
……それだけだと、思ってた
そこには俺の感情なんて、いらなかった筈なのに
「さとってさ、俺がもしあの時付き合うのをOKしてたら、何を試そうとしてたんだ?」
その日の夜さとに、俺は臆する事なく質問をぶつけた。恐らく聞くとさとははぐらかすか逃げようとするから、わざとさとが逃げない様にソファーに縫い止めて
突然の質問に戸惑ったのか、俺の視界に映る真っ黒な瞳が大きく揺らいだ。さとが困惑してるのは見て取れたけど、逃がさないと言わんばかりに物理的な距離を縮めて、ゆっくり、ゆっくりさとの核心に触れていく
キスがしたかったのかと聞くとそれは違うと言われ、じゃあ何がしたかったのかと聞けば、俺が予想していたものとは違う答えが返ってきた
「手……とか」
「ん?」
「手を繋いだり。それから、抱き合ってみたりとか。もし試すなら……男同士で抱き合っても気持ち悪く感じないのか、気になる、かも」
そうさとに言われた瞬間、ちょっと気が抜けた
なんだ、そんな事でいいのかって。キス以上の事を言われると思ってたから、正直驚いた
でもさとが冗談で言った訳じゃないってのは口調で直ぐにわかったから、じゃあ、してみようかな位に軽い気持ちでそんな事を思った
手を繋ぐ。それで、本当にわかんのかな
最初は半信半疑だった。ただ手が触れただけで意識するのなんて、小学生じゃあるまいし。それで何かが変わるとは到底思えなかった
これが油断してる証拠だと気付いたのは、手を繋いだ時の、さとの反応を見た後だった
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