【8】

14/22
前へ
/192ページ
次へ
ゆっくり、ゆっくりとさとの手に自分の手を添わせる。重ねた手は少し冷んやりとしていて、自分の手に収まらない感じが、触れているのは男の手なんだと実感を抱かせた 手を繋ぐのは、全然平気なんだよなあ なんて、確かめてんのは俺の方じゃないのに、心の中でそんな事を思った 俺がそのまま恋人が繋ぐ様に指を絡ませると、隣から酷く動揺した声が聞こえてきた 焦った声が俺の名前を呼ぶ。触れた部分から感じているさとの体温が、急激に上昇していくのが俺にもわかった 俺の熱が、さとにも伝わったって事なんだろうか。でも、なんか、むしろ今はさとの方が熱い気がするんだけど…… 恋人の様に繋いだ手を見て、何故かさとは俺の手を振り払おうとしてきた 俺は熱が離れていきそうになって寂しいとでも思ったのか、反射的に逃すまいと握った手に力が入る。強く握り締めれば、抵抗の力は直ぐに弱くなった さとの顔をチラリと覗けば、さとは俯き気味に顔を伏せていて、その表情は俺の方からじゃよく伺えない さとが今何考えてんのかわかんない。どんな表情で、俺と手を繋いでんのかも。けど触れ合った手を通して感じる熱が、さとの心情を俺に伝えてくるみたいだ 視線が全然合わないのは、この熱は、もしかして俺を意識してるから……? さっきまで冷たかった手。でも今は俺よりもずっと温かくて うん。やっぱり、意識されてるんだよな……これは 今まで、さとから恋愛の話をあんま聞いた事が無かったけど、もしかして……こういうのって慣れてなかったりすんのかな 確かに恋人繋ぎなんてそんな頻繁にしないかも知れないけど、それにしたって手を繋いだだけでこんな風にされたら、こっちだって意識するっての 手を繋いだだけなのに ヤバい……この反応は、予想外だ なんて言うか、初々しいカップルが、初めて手を繋いだ時みたいな気恥ずかしさ。この感覚、凄く新鮮だ 手を繋ぐのって、こんな、恥ずかしかったっけ
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1901人が本棚に入れています
本棚に追加