1901人が本棚に入れています
本棚に追加
「修一、ちょっと、待って。おかしい。この状況、何かおかしいって」
「だって、さとが言ったんだろ。手を繋ぐって」
「あ、いや、だからってこれはっ……!」
「うーん、これヤバいな。なんか恥ずかしい」
恥ずかしくて、妙に照れ臭い。身体に纏わり付く空気はどことなく甘くて、むず痒さに自然と口元が緩む。伝わってくる熱は徐々に俺の中まで侵食してきて、内側から少しずつ俺の身体を蝕んでいった
一瞬垣間見えたさとの顔には、焦りと困惑の色が滲んでいた。その中にほんの少しだけ熱っぽさを感じて、初めて見るさとの表情に俺の方が動揺した
あー、なんだよ、これ……
ほんっとに甘ったるいんだけど
その後、俺はさとが確かめたいと言ったもう一つの方法を試した。さとの身体を自分の方へ向けて、向き合ったさとの身体を自分の胸の中に閉じ込める
顔をさとの首元に埋めれば、まだ髪が完全に乾き切っていなかったのか、ほんのりとした冷たさを肌で感じ取った
俺が抱き締めてんのは、紛れもなく男の身体……なんだよなあ
骨張ってて、全然肉が無くて、でも大人しくされるがまま俺の中にすっぽりと埋まって
より一層密着したせいか、さとの熱と鼓動をこれでもかってくらい近くに感じる。耳元で大きく鳴り響く心臓の音は、正常な脈拍とは到底言えないものだった
さと、凄く、ドキドキしてる
それに呼応する様に速まる自分の鼓動。1分と経たずに、聞こえてくる心臓の音がどちらのものかわからなくなった
ヤバいな……俺も結構、ドキドキしてるかも
「修一、もういいから、離せ」
口では嫌だと言うのに、抵抗する力は驚く程に弱い。確かに、さとに逃げられない様にソファーと俺の身体でがっちりホールドはしてるんだけど、男が本気を出したらこんな拘束なんて無意味でしかない筈なのに
小さな抵抗しかしてこないさとがどんな顔して離せって言ってんのか気になって、そっと顔を覗き込んでみた。さとの表情が垣間見えたその瞬間、俺の心臓はドクンッ、と大きな音を鳴らした
……っ、なんっ……つう、顔してんの
視界に映るさとの表情は、俺からすれば堪らないって顔をしてる様に見える。眉を寄せて、唇を噛み締めて、顔を真っ赤に染め上げて
いつもクールで澄ました顔してるさとの表情に、いつもの面影はない。何で、どうしてこんな、可愛い事になってんの
最初のコメントを投稿しよう!