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男相手に可愛いなんておかしいのかも知れない。でも今のさとに対して、可愛い以外の表現が見当たらなかった
さとはまだそんなに酒を飲んではいないから、顔が赤いのは酔ったからじゃないと思う。でも照れてるとか、恥ずかしさを感じてるにしては、この穏やかじゃない心臓の音の説明が出来ない気がした
「それでさ、どうだった?」
「何が」
「俺と抱き合ってみて、気持ち悪く感じたかそうじゃないか」
手を繋いで、抱き合って、確かめたいと言ったのはさとの方だ。じゃあ実際にやってみてどうだったのか、さとの気持ちを知りたい
俺が質問をすれば、さとは狼狽える様に左右に視線を彷徨わせた後で再び俯いた。その数秒後に口を開いたけれど、考えがまとまらないのか、その言葉は途切れ途切れで何ともぎこちない
「手、繋がれるのも、抱き合うっていうか抱き締められるのも……気持ち悪くは、ない、けど」
「けど?」
「いきなりすぎて、なんかもう、訳わかんない」
そう呟いたさとの身体はブルブルと震えていた。本当にわからないんだと、腹の底から振り絞られた声。その姿は、触れたら壊れてしまいそうな程に弱々しく見えた
あ……やべえ……もしかして、やり過ぎたか?
この返しは、予想外だった。まさかこんな風になるなんて。俺、さとがあんま抵抗してこないからって、やり過ぎたかな
「なんか、すっげえ震えてるけど……大丈夫か?」
さとの震える姿に動揺した俺は、まるで壊れ物を扱う様に優しくさとの身体に触れた
しかし声を掛けると同時に聞こえてきたのは、これまた俺の予想を裏切る、甘く、下半身に直接的な刺激を与える様な色を含んだ声
「…………っぁ」
俺の指先がさとの首筋に触れた瞬間、それは自然にさとの口から漏れ出した。聞き逃すか否かの、本当に小さな声だったが、それは確実に俺の耳に届いていた
さとは咄嗟に手で口を覆い隠したけど、今更口を押さえたって、もう、遅い
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