【8】

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なんだ、今の、声 今の声……さとの声、だよな なんで、そんな、甘い声。俺はただ、触れただけなのに その声は俺にとってあまりに衝撃的で、刺激的だった。吐息に小さく紛れたその声は、俺の心を一瞬で鷲掴みにした あ……首、筋……? 「もしかして、首筋弱い、とか?」 「……っ、……!」 「この手、退かして。ねえ、今の声、もう一回聞かせてよ」 「い……、や、だっ……」 今の、よく聞こえなかったから、もう一回 聞きたい。聞きたい。今のはもしかして、感じた声……?さとは俺の指に、感じたのか? 声を出させたくてわざとらしく、人差し指でいやらしく、つぅ、とさとの首筋をなぞる。付け根辺りを優しくそっとなぞれば、必死に堪える様な甘い吐息が俺の耳にかかった ーー違う。そうじゃない。そうじゃなくて、声、聞かせてってば 「ほら、手、退けて」 「ふ、ぁっ……!」 ……ゾクッ ああ、これだ。下に響く、この声 ヤバイ。ヤバイヤバイヤバイ これ以上は危険だと、頭の中で警鐘が鳴り響く。引き返すなら、今だと けど目尻に涙を浮かべながら俺からの攻撃に耐えるさとの姿を見れば、警告なんて無意味も同然だ もっと、その顔をグチャグチャに歪めさせたい。どうにかして泣かせたい。多分本人は気付いてないだろうけど、さとは今、そう相手に思わせてしまう様な表情をしている 「男相手にこんな事思うのはおかしいのかも知んないけどさ。なんか今、さととすっげえキスがしたい。キス、していい?」 「なに……、言ってっ……!」 「俺もさとと手え繋いだり、抱き合ったりしても全然平気だったんだ。だからさ、このまま試さねえ?キスも平気か、どうか」 俺も平気だったからこのままキスも試さないか、なんて、ただの言い訳だ。さととキスをする為に取って付けた様な、言い訳 なんて言うか、口では嫌がってんのに身体が本人の意思を無視して反応してる所とか、本当たまんない いや、たまったもんじゃない。ねえ、無自覚だろうけどさ、その表情……誘ってんの?
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