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修一への恋心を自覚したのは、多分、中学校に入って直ぐの事だったと思う ある日突然、修一が、好きな子が出来たと言い出した。顔を真っ赤に染めながら、同じクラスで隣の席になった女の子を好きになったのだと それまでは、お互いに誰が好きだとか、恋愛の話なんかした事も無かった 小学生の時は男女なんて関係なく休み時間運動場で駆け回っていた筈なのに、中学校に入った途端それは無くなったし、修一は女の子を恋愛対象として意識する様になり、恋をした その時まで、修一の中の一番は俺だって、ずっと思ってて だから、修一に好きな奴が出来たって聞いた時は、なんか、ムカついた 俺以外を映し、俺以外に想い馳せる目に、苛々してた 誰にも、渡したくないと思った。俺だけを見て欲しいと思った。その笑顔を、俺だけに向けて欲しいと思った そう思っている時点で、俺のあいつへの気持ちは、既に友達の域を越えていたんだ でも最初は男に対してこんな感情を抱く事自体信じられなくて、信じたくなくて修一にキツく当たったり、避けてしまったりしてた いきなり連絡をしなくなり、些細な事で突っかかっては喧嘩を繰り返して、あり得ないと、男を好きになんてなる訳ないと自分に暴言を吐き続けてた しかし避けた所でこの感情をどうこう出来る訳もなく、むしろ避けてる間、修一の事ばかり考えて何も手につかなくなって 避けても避けても、寄ってくる修一が愛おしくて、でもその目に俺が映る事は無くて 毎日学校に行く度に、修一が好きだと言っていた女子生徒に苛立って、嫉妬して、俺の方が修一を好きだと、お前なんかに渡さないと身勝手な対抗心さえも抱いた 辛かった。苦しかった。息が出来ない程に、俺は深みに嵌っていった それからは、もう、自覚するしかなかった。修一を、恋愛対象として見ているんだと。恋心を、抱いているんだと そう、俺は生まれて初めて、恋をした。不毛だと最初からわかりきってたのに、恋をする事を止められなかった 気付かない振りも、気付いた後で諦める事も出来なくて 離れられないのだと、離れれば余計に想いを募られてしまうのだと知ったその日、俺は初めて感情を押し殺す方法を知った
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