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「いつも、ありがとな」
「……別に、俺は何もしてないし」
「そんな事ないって。なあ、さとはさ、好きな奴とか居ねーの?あんま噂とか聞かないし、むしろそういう話全然してくれねーよな」
ああ、そりゃあ、俺が好きなのはお前だからな。教える訳ないだろ
「お前が振られたら、今度は俺が慰めてやるからさ」
「……そうだな」
ああ……本当、鈍い奴
暫くすると、修一はだいぶ酔いが回ったのか、身体が左右に揺れ始めた。正に酔い潰れる寸前だ
しかしビールの缶を握り締めて離さないまま、うーん、と唸りながらもまだ飲むと言ってきかない
ビールを既に5本近くも空けており、テーブルに転がる空き缶と修一を交互に見て、俺は盛大な溜息を漏らした
「ほら、もうその辺にしとけ」
「やだ。もっと飲む」
「駄々っ子か。とりあえず、今日はベッド使っていいから」
俺は修一が持っていたビールの缶を無理矢理取り上げて、今日はこの位にしておけとお開きを促した
文字通り修一は今日も泊まっていく。何度も何度も起き上がれと言ってはみたが、結局修一はテーブルに突っ伏して今にも寝てしまいそうだ
仕方ない、と今日何度目かもわからない溜息を漏らし、俺は修一の身体だということを意識しない様に心に言い聞かせ、自分の肩に修一の腕を回して身体を持ち上げた
力を失った身体は思いの外重たくて、俺はぜえぜえと荒い呼吸を繰り返しながら隣にあるベッドに修一を放り投げる
近くにあるタオルケットを手に取り俺のベッドを占領する人物を横目で見やれば、まだ若干意識はあったらしい。次の瞬間、二つの視線が、合わさった
しまった、と思ってももう遅い
あり得ない位、至近距離でぶつかり合った視線。攻撃力の高い不意打ちに、俺は持っていたタオルケットをボサッと音を立てて床へと落とす
真っ直ぐに俺を映す黒い瞳に、呼吸すらも忘れて吸い込まれそうになった
外せない視線の先で、ゆっくりと修一の唇が開いて、何とも言えない気持ちにされた。ああ、このまま奪ってしまえればどんなに楽だろうか
「さと、なんで……こんな、優しいの?」
薄っすらとした意識しか無いのか、紡がれた言葉はやけにたどたどしい
「別に、普通だろ?」
優しい、それは、お前にだけだ
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