【2】

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「普通じゃないよ。すっげえ優しい。お前が女なら、彼女にしたい」 「……っな、に……言って……」 「きっと、いい彼女になるんだろうな」 なんだよっ……それ やめろ そんな事簡単に言うな。俺の心を、そんな簡単に乱すな 俺の事なんて見てないくせに 「バカな事言ってんなよ。ちょっと、水取ってくる」 俺はこの場から離れる事に、必死だった。この空気が、いたたまれなかった 怖かった。これ以上、自分を掻き乱されるのが。隠してきた本当の気持ちを暴かれるのが しかし、離れる瞬間、俺は右の手首をグッと掴まれた。俺はそれに反応するより先にベッドに引き摺り込まれ、修一に抱き締められる形になる 急に近付いた距離に順応出来ず、俺はいきなり変わった自分の視界に目を見張った 「あー、お前やっぱ硬いな」 「ちょ、何抱き着いてんだ酔っ払いっ……」 「お前もう少し肉付けろよ。抱き心地良くしろ」 「はあっ……!?ていうか、太れとか、俺が女ならそんな事言う奴絶対彼氏にしたくないぞっ……」 「ひっでぇなあ~、逆に俺が女ならさとに惚れてただろうけど。なんだかんだ、こうやってベッドに運んでくれる所とか、マジ優しいし」 こいつには、嫌味は通じない様だ。むしろ、惚れてたなんて言われてしまえば俺はどうする事も出来なくなる ああ、酷い奴。人の気も知らないで、そんな、惑わせる様な事を平気で言う だったら なんで、俺は女じゃないんだ なんで、お前は男なんだ 俺が女だったら付き合えたのか。お前の隣を、恋人の顔で歩けたのか ……お前に好きだって、面と向かって、言えるのか そんな事を何度も何度も考えては、まるで、無限ループに迷い込んだみたいに抜け出せなくなった でも、俺は、何年も続けてきたこの関係を壊す事なんて出来なくて、熱くなる目頭をまだ自由な左手で覆い隠した。なんとか保った精神で、必死に言葉を振り絞る 「……彼女でも、彼氏でも、どっちも御免だ。ていうか早く寝ろ」 「ははっ、おやすみ」 俺が必死に自分を抑えようとしてんのに、まるで何事も無かったかの様に寝てしまった修一 なんで、こんな奴好きなんだ 鈍くて 無神経で 俺の事なんて、見ようともしない奴 なんで なんで こんなに好きなんだ
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