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「普通じゃないよ。すっげえ優しい。お前が女なら、彼女にしたい」
「……っな、に……言って……」
「きっと、いい彼女になるんだろうな」
なんだよっ……それ
やめろ
そんな事簡単に言うな。俺の心を、そんな簡単に乱すな
俺の事なんて見てないくせに
「バカな事言ってんなよ。ちょっと、水取ってくる」
俺はこの場から離れる事に、必死だった。この空気が、いたたまれなかった
怖かった。これ以上、自分を掻き乱されるのが。隠してきた本当の気持ちを暴かれるのが
しかし、離れる瞬間、俺は右の手首をグッと掴まれた。俺はそれに反応するより先にベッドに引き摺り込まれ、修一に抱き締められる形になる
急に近付いた距離に順応出来ず、俺はいきなり変わった自分の視界に目を見張った
「あー、お前やっぱ硬いな」
「ちょ、何抱き着いてんだ酔っ払いっ……」
「お前もう少し肉付けろよ。抱き心地良くしろ」
「はあっ……!?ていうか、太れとか、俺が女ならそんな事言う奴絶対彼氏にしたくないぞっ……」
「ひっでぇなあ~、逆に俺が女ならさとに惚れてただろうけど。なんだかんだ、こうやってベッドに運んでくれる所とか、マジ優しいし」
こいつには、嫌味は通じない様だ。むしろ、惚れてたなんて言われてしまえば俺はどうする事も出来なくなる
ああ、酷い奴。人の気も知らないで、そんな、惑わせる様な事を平気で言う
だったら
なんで、俺は女じゃないんだ
なんで、お前は男なんだ
俺が女だったら付き合えたのか。お前の隣を、恋人の顔で歩けたのか
……お前に好きだって、面と向かって、言えるのか
そんな事を何度も何度も考えては、まるで、無限ループに迷い込んだみたいに抜け出せなくなった
でも、俺は、何年も続けてきたこの関係を壊す事なんて出来なくて、熱くなる目頭をまだ自由な左手で覆い隠した。なんとか保った精神で、必死に言葉を振り絞る
「……彼女でも、彼氏でも、どっちも御免だ。ていうか早く寝ろ」
「ははっ、おやすみ」
俺が必死に自分を抑えようとしてんのに、まるで何事も無かったかの様に寝てしまった修一
なんで、こんな奴好きなんだ
鈍くて
無神経で
俺の事なんて、見ようともしない奴
なんで
なんで
こんなに好きなんだ
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