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修一が彼女と別れて、二ヶ月が経った。修一は恋人が居なくなった寂しさからか、俺の家に来る回数が増えた 頻繁に訪れる様になって、俺の家には自然と修一の物が増えていった。俺はその事を少しだけ嬉しく思いつつ、少しだけ、困惑している 「さと、今日も泊まっていい?」 「許可しなくなって、泊まっていくんだろ」 俺は最近、何だか、ずっと修一との距離感を上手く測れていない 今まで近付き過ぎない様に、慎重に一定の距離を保っていたのに、最近特に均衡が崩れかけている 半径30cm内に、意図せず浸入してしまってる事に気付いて、慌てて距離を取る事が多くなってきた 手を伸ばせば、簡単に届く距離。簡単に触れられる唇 そういった感情を込めて、触れれば最後。きっと後戻りなんて出来ないんだろう 別れて直ぐは、面には出さないもののかなり落ち込んでいた修一。しかし最近、ようやく吹っ切れたらしい 二ヶ月経った今となっては、もう慰める事も話を聞いてやる事も殆ど無くなり、修一は純粋に俺の家に泊まりに来ている だからこそ、距離を、測り損ねている 「風呂上がったぞー。さと、レポート終わった?」 「……ああ。終わったから俺も風呂入る。けど、その前に服を着ろ」 今正に風呂から上がってきた修一は、パンツを履いてるとは言え、上半身は裸。目のやり場に困る この年になって鼻血を出すなんて恥ずかしいから、早く服を着ろ。もう、身が、持たない 泊まりに来るのはいい。いや、むしろ嬉しい。だが、この無防備さ加減には頭を悩ませてる。俺はいつまで、理性と戦わないといけないんだろう 修一に気付かれない様に小さく溜息を漏らすと、俺も風呂に入ろうとソファーから立ち上がった 修一の隣を横切る瞬間、ふわりと香ったシャンプーの匂いに、無意識に手を伸ばしかけた。危うく腕を掴んで、壁に身体を押し付けて、無理矢理唇を塞ぐ所だった ああ、駄目だ、しっかりしろ。距離を見誤るな 友人の距離は、そんなに、近くない
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