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「……あー、いや、えっと、ほら俺って女があんま好きじゃないからさ、男ならどうかと思って」
何か言わないといけないと、焦った俺が発した言葉は、自分ですらも驚く様な内容だった。好きだとは到底言える訳無くて、でも修一と付き合う事を諦められなくて
色んな言葉が一瞬で俺の頭を駆け巡り、言葉の波が俺の思考を全て呑み込んで、正常な思考回路なんてどこかに吹き飛んでしまった
あ……れ、俺は今、何を、言ってる?
違う。こんな事が、言いたいんじゃない
気付いた所でもう遅い。自分で作った境界線なんて、もう、とっくに踏み越えていた
それでも、後には、引けなくて
「お前が男平気ならさ、ちょっと、試してみたいっていうか」
違う
やめろ。それ以上言うな
「俺と付き合ってみね?今までだってずっと一緒に居れたし、案外長続きしたりして」
やめろやめろやめろ。誰でもいいみたいな、こんな、言い方ーー
こんな事、言いたい訳じゃない。なのに、言葉を紡ぐ事が止められない
誰か、誰か、誰か
俺の口を塞いでくれ
黒が侵食する視界の中で、最後に映ったのは、綺麗な綺麗な横顔
修一は暫く考える素振りを見せた後、スローモーションの様にゆっくりとこちらを向いて、ふわりと笑った
少しだけ細められた目。上げられた口角。優し気な笑顔に、胸が、これでもかという位締め付けられた
「うーん、なんて言うか、ごめん。さととは、親友で居たいっていうかさ……そういうのとは、ちょっと違う気がすんだよね」
”だからこれからも、親友で居てよ”
俺を親友と信じて疑わない、曇りのない笑顔。親友で居たい。それが修一が考え、導き出した答え
ああ、俺は、一体何を期待してたんだ。何で、俺は、修一と親友以上の関係になれると思ったんだ
何で、一瞬でも、もしかしたら恋人という関係になれるんじゃないかなんて、幻想を抱いたんだ
傷付く事位、いつもの俺ならわかった筈なのに。言った後の考えが及ばない程に、今日の俺は、余裕なんてこれっぽっちも無かった
本当に伝えたかった想いを伝える事すら出来ないまま、俺の長年の想いは、たった5分で儚く散った
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