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「急に来るなんて、何かあったのか」 ビールをちびちびと飲み始めて15分程経った頃だろうか お互いそれまで無言で、時計の秒針の音だけが室内に響き、俺達を取り囲む環境は全て静寂に包まれていた そんな中、俺よりも少し低い声がこの静寂を壊す様に、それでいてどこか冷たい空気を溶かす様に俺に語りかける 顔を見なくても、その声だけで夏富が俺の事を心配してるのだとわかった。いつもより柔らかく、優しい声音だ 人は弱っている時に優しくされるのに弱いとよく言うが、きっと、こういう時の事を言うんだろう 俺はその声に気が緩み、自然と今日あった出来事を口から零しそうになって、咄嗟に口元を手で覆った 修一に告白して振られた、なんて……言える訳、無いのに 「……別に。ただ、飲み会がつまんなかっただけ」 「まあ、それならいいが。上島が連絡も無しに来るなんて初めてだったから、少し驚いた。何かあったなら、話聞くぞ」 「ありがとな。でも、本当に大丈夫。単純に連絡忘れてただけ」 「そうか」 連絡を忘れただけだと言って、少しだけ笑みを浮かべれば、夏富は肩からフッ、と力を抜いてそれならいいと言った そんな夏富に俺も張り詰めていた緊張の糸が解けたのか、力を抜いてより一層ベッドに凭れかかる 先程よりも、二人を包む空気はどこか温かくて、胸を締め付ける様な痛みが少しだけ緩和された気がした 今なら冷静に、考えられる。この現実はきっと、俺が最も恐れていた最悪の未来じゃない 修一は俺の言葉に気持ち悪がる事なく、はぐらかす事もなくちゃんとした答えをくれた。親友としてなら隣に居ていいと言ってくれた 親友としてだったら 俺は、まだ、修一の隣に居ていいんだ だったら、またあの境界線を作ろう。今度こそ距離を間違えない様に、測って この気持ちを直ぐにどうこう出来るとは思っていない。今更諦められるとも思えない けれど、側に居たい 俺は改めて、修一の親友で居る事を決めた。迷いは一切無かった この想いを打ち明けて側に居れなくなるよりは、一生親友で居る方がずっといい
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