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目にかかる明るさで目が醒めると、ぼやけた視界に真っ先に飛び込んできたのは、自分の家とは違う見慣れない天井だった 見慣れないけれど見た事はある、自分の家の白い天井とは違うクリーム色の天井 そう言えば、夏富の家に来てたんだっけと、思い出した様に現状を理解した 未だ冴えない思考のまま少しだけ身動ぎをして、マットレスの弾力を身体で感じながら、もしかしてと辺りを見回した いつも泊まっていた時とどこか違うと思ったら、そうか、ここはベッドの上なのか いつもはテーブルを片付けてベッドの横に布団を敷いてもらっていたから、視界に映る物の位置がいつもと違って見えて何だか変な感じだ 元より、自分がベッドの上に居ることに寝起きながらかなり驚いた。なんで俺、ベッドで寝てるんだ 俺が自らこのベッドに入った記憶が無い事からも、夏富が俺をベッドに運んでくれた事は容易に想像出来た。それを理解して、はあ、と溜息を漏らす ……後で、謝ろう 上半身を起こして、今一度部屋を見回してみた。ベッドの横に敷かれていたであろう布団は既に片付けられていて、部屋の中央にはテーブルがぽつんと置いてあるだけだ 「起きたのか」 不意にリビングのドアの方から声をかけられ、反射的に声がした方へ視線を向ける そこには、恐らく顔を洗ってきたばかりの、滴り落ちる水滴をタオルで拭う夏富の姿があった 昨日の優し気な声とは少し違う、いつもの低音で淡々と発せられた声。聞き慣れてるからか、俺としてはこっちの方がしっくりくるな、と頭の片隅で思った
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