【4】

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あの飲み会から一週間、俺はあの日からずっと修一と顔を合わせられずに居た 修一から度々遊ぼうという連絡は来るものの、俺は事ある毎に”バイトがある”、”同じ学部の奴の所に泊まりに行く”と返信を返した 携帯電話の画面を見つめて、溜息を漏らす日々が続く。修一からの連絡が待ち遠しいと思うのと同時に、怖くて仕方なかった 連絡は取り合っているものの、まだ会う事にどうしても躊躇いがあり、意識的に避けてしまう 突然家に来る可能性もあるからと、この一週間殆ど家に居なかった。バイトを増やしたり、夏富の家に泊めてもらったり 仕方ないんだ。たった一週間じゃ、そう簡単に立ち直れない 長年想いを寄せていた相手から振られて、あんなにも痛くて苦しかったのに、平気な顔なんて出来る訳なくて 普段通り、今まで通りいられる程、俺の想いは、ちっぽけじゃない。傷だって、浅くはない 今会ったら、顔を見たら全てが終わる気がした。あの日必死で堪えたのに、今度こそ、修一の目の前で涙が堪え切れなくなるかも知れなくて 試してみたいなんて、あんな事を言った俺に今までと変わらずメールしてくれて、遊ぼうと誘ってくれて 修一は多分、会ったら今までと変わらない笑顔を向けてくれるんだろう。優しく微笑んで、隣に立ってくれるんだろう その事が容易に想像出来て、更に胸が痛くなった。優しさが、凄く、痛い その気が無いなら優しくなんてして欲しくないのに。優しいから、俺みたいなのに付け入られるんだ そんなんだから、諦め、切れないんだ 今会えば、俺が必死で作ろうとしてる親友の顔なんて、会った瞬間に崩れてしまうだろう。抑えないと。修一の隣に居たいなら、この気持ちは抑えないと 再び親友の顔をするのには、この一週間だけじゃ足りない。まだ、俺は、平気な顔して笑えない
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