1898人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
俺の心とは裏腹に、修一は何だか嬉しそうに微笑んでいた。失くしたと思ってたオモチャが見つかった子供みたいに、無邪気な笑顔で
何も変わらない。あの日の出来事なんて、まるで何も無かったみたいに修一の笑顔は屈託がなくて
修一の中ではあの出来事は何でも無かった事になってるんだ。俺の想いは、俺が言い訳した通り、冗談で済まされてる
冗談だと言ったのは、俺
忘れろと言ったのも、俺
ああ、本当、矛盾してる。自分で言っておきながら、なんでこんな、傷付いたみたいになってんだ
「メールでも言ったけど、今日のバイトは何時から何時までのシフト?」
「……悪い、今日は夜勤だから。俺、用事あるからさっさと済ませたいんだけど」
だから、その手を退かしてくれ
俺の腕は、何故か修一の手中にあった。肩を掴まれ、振り向かされた後で腕を持たれた。痛くは無いが、結構強く掴まれてる
……まるで、俺が逃げないようにしてるみたいだ
心を見透かされた気分だった。だって俺は、こんなにも、ここから逃げ出したい
「ちょっと待って。じゃあ明日は?明日ならバイト無いよな?」
「あー、えっと、明日は泊まりに行く約束してるんだよ」
「……それって、昨日も泊まりに行ってたんじゃねえの?」
「あ、ああ。一緒に課題やるって約束しててさ」
だから
もう、いいだろ。期待、させんなよ
気が無いなら、構うなよ。優しくすんな。それ以上、笑うな
最初のコメントを投稿しよう!