【4】

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「夏富……手、そろそろ」 「ん、ああ。忘れてた」 他の学生達が、手を繋いで歩く俺達を見てクスクスと笑う声が耳に届いて、急激に恥ずかしくなった俺は夏富に手を離してくれと頼んだ 手を離す事を本気で忘れていたのか何なのか、夏富は初めてこちらを振り返ると、ああと一度頷いて直ぐに繋いでいた手を解いた 「夏富、どうして……」 「何がだ」 「約束なんて、して無いよな」 夏富とは、普段からお昼を一緒に食べる約束をしてる訳じゃない。レポートの提出が近くなると、どちらかが一緒に食べないかと持ち掛ける あとは、タイミングが合えば一緒に食べたり。でも今日は、約束してはいなかった筈だ なのになんで、修一にあんな事を言ったのか。なんで俺をあの場から連れ出してくれたのか、俺にはわからなかった 「あれは口実だ。こうでも言わないと、引き下がらなかっただろ」 「そうじゃなくて……」 俺と修一が親友である事は、よく知ってる筈だ。俺が修一を避けてる事は夏富には一切言ってはいなかったし、夏富の返答は、あの場から俺を連れ出した理由にはなっていない どうして、と、俺は夏富の行動に疑問しか浮かばなかった 「そうだな。何となくだが、あの場から連れ出した方がいい気がした。……迷惑だったか?」 迷惑かと聞かれて、俺は素直に首を横へ振った。連れ出してくれた理由は、ただ、何となくだったんだと夏富は言う 俺はその返答を聞いて、もしかしたら逃げ出したいと思う感情が、顔に出てたかも知れないなと納得した 「いや……むしろ、助かった」 「喧嘩でもしたのか」 「まあ、そんなとこ。けど、なんであんな所に居たんだ?」 「ああ、それは……たまたまだ」 あんな人気のない場所に来るなんてと思ったが、夏富はそれ以上何も言う事は無かった
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