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風呂上がりの、晒された肌に絡み付く指先。あの人気のない大学の裏庭時と同じ様に、俺の腕を掴んで逃がそうとしない修一に、俺の思考回路はまたしてもショートしそうになった
少しだけ汗ばんだ手が、俺の皮膚に吸い付いてきて、そこからどんどん発火していく。触れられた部分が、熱い。離して欲しい。このままじゃ、火傷する
「避けられてる理由位、聞く権利あると思うけど」
修一の言葉が頭に入ってこない位に、俺の脳内はおかしな事になっていた。目の奥でチカチカと火花が散り、クラクラと眩暈がした
「なあ、さと。教えて」
今、修一は、なんて言った?
耳には届いている筈だったのに、俺の脳内に届く前に掻き消えた。ああ、どうしよう、何も考えられない
10日間、ろくに会ってなかった想い人に、逃がさないと言って触れられてみろよ。恋をしてるなら、誰だってこうなるに決まってる
触れられただけで心臓がバクバク言って、体温が一気に上昇して、顔なんて、きっと見れたもんじゃない
離せ、離せ、離せ
俺とまともな話がしたいなら、その手を離してからにしろよ
力じゃどうにも敵わなくて振り解けないだろうからと、自由なもう一つの手で修一の指を一本ずつ引き剥がしていく
修一の手を無理矢理引き剥がすと、未だ靴を履いて玄関に居る修一から一定の距離を取りたくて、一歩、二歩と後退った
「なんでだよ」
「え……」
「あいつの手は振り解かなかったくせに」
「あいつって、誰」
「……さあ。頭で考えればわかるんじゃないの」
俺が訳がわからないといった表情を見せれば、修一が一瞬、睨む様にこちらを見た。怒りの色が、先程よりも強く、濃くなっている
こんなにも修一が怖いと思ったのは、初めてかも知れない
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