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「なあ、あいつにも同じ事言った?」
「だから、あいつって誰だよ。夏富の事か?言ったって、何を」
「男同士を試してみたいって、あいつにも言ったんじゃないかと思って。泊まりに行ってるのもあいつだよな。あいつと付き合ってんの?」
「なっ、付き合ってないっ……、ていうか、そんな事誰にでも言う訳ないだろ!?」
何を、言い出すかと思えば。なんだよそれ。夏富と俺が付き合う?あり得ないだろ
試したいなんて言葉、お前以外に言う訳ない。お前だったから付き合いたいと、どんな事を言ってでも恋人になりたいと思ったのに
「本当に、付き合ってないんだな」
「当たり前だっ……」
修一は靴を乱暴に脱ぎ捨てると、廊下をズカズカと歩いて俺の方へと近付いてきた。俺はどんどん後ろへ下がっていくも、閉まったリビングのドアに身体がぶつかり、逃げ場を失ってしまう
「そっか。じゃあ、いいよな、俺が立候補したって。俺、お前と離れるとか嫌だからさ。付き合ってよ、俺と」
「は…………、はあっ……!?」
「恋人になって。そうすれば俺はさとと一緒に居れるし、さとは男同士がどうなのか試せていいだろ?」
これは利害の一致ってやつだと、修一は言葉を続けた。しかし、利害とか、今の俺にはそんなものを考える余裕など少しもありはしなかった
俺は今、何て言われた。付き合うって、言われたのか?
聞き間違い、なのか。いや、こんな至近距離に居るのに、聞き間違える筈なんて無い。けれど、修一の言葉はあまりにも俺に都合のいい様に出来ていた
脳みそに修一からの言葉を伝達する前に、俺の良い様に変換でもされたか?それともこれは夢なのか
俺の脳みそは、明らかにキャパシティーオーバーというやつだった。混乱する所じゃない。脳みそがこっぱ微塵に吹き飛ばされたみたいな衝撃だった
「あいつにまだ言ってないなら、全然問題無いよな」
再び腕を掴まれ、引き寄せられてあっという間に俺と修一との距離は僅か3cm。触れてくる感触が、体温があまりにもリアルで、これが現実であると訴える
修一がこんな事を言い出すなんて考えられない。修一にこんな事を言わせてしまう程、俺は修一を怒らせたのか
でも、こんな時まで、酷い奴だ。他にも殴るなりなんなり、俺に怒りをぶつける方法なんていくらでもある筈なのに
よりにもよって、付き合えだなんて。本当に、酷い
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