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「ははっ……はははっ……あんなの、ただの冗談だろ。なに、真に受けてんだ」
「俺はバカだから、真に受けるよ。それにこれは、俺なりに考えて出した結論だから。さとに避けられんのは、嫌だ。だったら、いっそ付き合っちまえばそんな心配いらなくなる」
「なんだよ、それっ……、恋人って、意味わかって使ってんのかっ……!」
お前の方から、嫌だって言ったくせに。俺の事は友情でしか見れないって言ったくせに
お前は俺に親友として隣に居て欲しいと思ってんだろ。だったら気を持たせる事言うな。これ以上俺を掻き乱すな
お前に振り回されるのは、もう、御免だ
「わかってるよ。何ならキスでもするか。今、ここで」
「~ッ、絶対、嫌だっ!!俺は認めないっ……、恋人なんてっ」
これ以上俺を惨めにすんな。俺がお前をどんな風に想ってるのか知りもしないで、どうして避けてたのか、考えもしないで
こんなの、俺は、認めない。認めたくない
しかし、修一からは一歩も引く気は無い様だった。修一は有無を言わさず、一方的に自分の意見だけを述べる
「ダメだよ。もう遅い。これは決定事項だから」
「拒否権を使わせろっ!!俺の気持ちを無視すんなっ」
「無理。それじゃあ俺、バイト行ってくるから。また連絡する」
「ちょ、待っ……!」
俺の否定の言葉を全部無視して、嵐の様に去っていった修一。咄嗟に手を伸ばしたけど、その手は修一に届く事はなく地に落とされた
一人取り残されたリビングのドアの前で、俺は壁に凭れてズルズルと崩れ落ちていく
指先が震えて、足には全く力が入らなくて、頭の中では幾つもの単語が行き交い俺を攻め立てる
ああ、頭が痛い
念願の、修一の恋人になれるチャンスだ。なのに俺は消失感しか感じられなくて
こんなの、望んでた訳じゃないんだ
本当に望んでたのは、試すとかそんなんじゃなかった。そんなんじゃ、なくて……
長年築き上げてきた関係が、音を立てて、崩れていく
「なんだよ、なんなんだよっ……これっ……」
誰か、誰か、これは夢が現実か、俺に教えてくれ
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