【4】

19/19

1898人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
「ははっ……はははっ……あんなの、ただの冗談だろ。なに、真に受けてんだ」 「俺はバカだから、真に受けるよ。それにこれは、俺なりに考えて出した結論だから。さとに避けられんのは、嫌だ。だったら、いっそ付き合っちまえばそんな心配いらなくなる」 「なんだよ、それっ……、恋人って、意味わかって使ってんのかっ……!」 お前の方から、嫌だって言ったくせに。俺の事は友情でしか見れないって言ったくせに お前は俺に親友として隣に居て欲しいと思ってんだろ。だったら気を持たせる事言うな。これ以上俺を掻き乱すな お前に振り回されるのは、もう、御免だ 「わかってるよ。何ならキスでもするか。今、ここで」 「~ッ、絶対、嫌だっ!!俺は認めないっ……、恋人なんてっ」 これ以上俺を惨めにすんな。俺がお前をどんな風に想ってるのか知りもしないで、どうして避けてたのか、考えもしないで こんなの、俺は、認めない。認めたくない しかし、修一からは一歩も引く気は無い様だった。修一は有無を言わさず、一方的に自分の意見だけを述べる 「ダメだよ。もう遅い。これは決定事項だから」 「拒否権を使わせろっ!!俺の気持ちを無視すんなっ」 「無理。それじゃあ俺、バイト行ってくるから。また連絡する」 「ちょ、待っ……!」 俺の否定の言葉を全部無視して、嵐の様に去っていった修一。咄嗟に手を伸ばしたけど、その手は修一に届く事はなく地に落とされた 一人取り残されたリビングのドアの前で、俺は壁に凭れてズルズルと崩れ落ちていく 指先が震えて、足には全く力が入らなくて、頭の中では幾つもの単語が行き交い俺を攻め立てる ああ、頭が痛い 念願の、修一の恋人になれるチャンスだ。なのに俺は消失感しか感じられなくて こんなの、望んでた訳じゃないんだ 本当に望んでたのは、試すとかそんなんじゃなかった。そんなんじゃ、なくて…… 長年築き上げてきた関係が、音を立てて、崩れていく 「なんだよ、なんなんだよっ……これっ……」 誰か、誰か、これは夢が現実か、俺に教えてくれ
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1898人が本棚に入れています
本棚に追加