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「なんで、着いてくるんだ」
家を目前に控え、未だ後を着いてくる修一に仕方なく声をかける。すると俺から話しかけたからか、先程よりも少しだけ高いトーンで返答が返ってきた
「さと、今日バイト無いじゃん。俺も無いしさ。今日泊めろよな」
「……お前、今日バイトの日だったよな?」
「ああ、この間休みの日に出たから、今日休んでいいって」
「あ、そう」
ほんっとに、なんてタイミングが悪いんだ。おかしいと思った。バイトある筈なのに、なんで着いて来るんだろうって
修一が今日バイトだったなら、バイト終わりに来られても居留守を使えばなんとかなるかと思ってたのに
せめてバイト休みなのが大学に居るうちにわかれば、何かしら言い訳を付けて逃げられたかも知れないのに
それとも、俺が逃げるからわざと家に着く直前まで言わなかったのか
家の前にたどり着くと、俺は傘を外の格子に引っ掛けて玄関のドアに鍵を差し込んだ。人一人が通れる分だけドアを開けて、素早く中に入ろうとする
しかし次の瞬間、外側のドアノブを持たれ、一気に引かれてドアを半分以上開けられてしまった
俺は内側のドアノブを持って閉めようとしていたから、必然的に身体を引かれ、バランスを崩して前のめりになる。転けそうになるも何とか踏み止まって、何をするんだと言わんばかりに修一を睨んだ
此の期に及んで俺がドアを閉めようとするとは思っていなかったのか、修一は若干焦った様な声を上げる
「ちょ、閉めんな」
「……本気で泊まって行く気か」
「勿論。恋人になって、初めてのお泊まりってやつ?」
「さよなら」
「だから閉めんなって」
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