【5】

7/15

1898人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
修一はソファーから立ち上がると、俺の腰を掴んで引き寄せて、再びソファーへボフッと大きな音を立てて座った 俺は修一の両足の間に座らされて、修一に後ろからガッチリとホールドするみたいに抱き締められている。今の状況を例えるならば、そんな所だ 背中に人の体温を感じたその瞬間、俺はわなわなと身体を震わせた 「なっ……、なにすんだっ……!」 そう叫ばずにはいられなかった あり得ない。あり得ない。この首筋にかかる吐息も、強く力の込められた腕も、密着する身体も全部が俺にこの現実を夢なんじゃないかと錯覚させる こんなの、心臓に悪いなんて次元じゃない。ベッドに引き摺り込まれた時ですらも、ここまでピッタリと身体と身体がくっ付く事は無かったのに 離してくれ。今すぐ、離して。じゃないと、このままどうにかなってしまいそうだ そんな事を思った所で、修一が離す筈もない。むしろ、耳の直ぐ後ろで囁かれる言葉が、俺の心をもっと深くまで抉り、狂わせる 「往生際が悪い所、昔から変わらないな。じゃあなんで、そんな顔してんの」 ーー何でもないなら、そんな顔、すんな もう一度紡がれたその言葉は、心の奥底から振り絞られた様な、何らかの感情が押し殺された様だった そんな顔、と、修一は言った。だが俺は自分が今どんな顔をしていたのかなんて全然わかんなくて、それはどんな顔だよと暴言を吐きながら必死に修一の拘束から逃れようとした 腕を引き剥がそうとして、全身でもがいて、それでも耳元で修一が喋る度にゾクゾクッ……と身体を震わせる 「ああ、もう、意味わかんねえよ。さと、怒ってたんじゃねえの?俺が何かしたんじゃねえの?」 「なんだよそれ……、ていうか、離れろっ……!」 「さとが俺を避けてた本当の理由を言うまで、このまま離さない」
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1898人が本棚に入れています
本棚に追加