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このまま離さないと言われて焦った。修一は多分本気だ。だって、先程よりも、拘束する腕の力が増してる
「お前なあっ……!」
「あと、ついでに触っちゃダメな理由もな。明確な理由が無い限り、触るから」
修一の左手の指先が、修一の腕を引き剥がそうとする俺の右の掌に添えられた。そのままするりとなぞられて、思いがけない感触に、俺はビクッと身体を仰け反らせた
修一の右腕はまだ、俺の腰を抱いたまま。意思を持った指先は何度も俺の肌をなぞって、指と指を絡め合わせて
これだけの事で、俺の身体は否が応でも反応する。修一の行動も、言動も、俺にとっては全部効き目の強い媚薬で、その効果は絶大だ。身体が意思に勝てなくなるくらい、強いやつ
「や、めっ……」
身体の奥深くが、じんわりと熱くなる。それを自覚したくなくて、俺は小さく首を振った
やめろ。もう、やめてくれ
俺に、触らないで
「俺、潔癖だからっ……だからっ……!」
「それ嘘だな。気付いてないだろ。さと、嘘つく時に下唇を噛む癖があるんだよ」
「……っ!?」
言われて初めて、俺は自分が下唇をギュッと噛み締めている事に気付いた。そんな癖があったなんて自分でも知らなくて、的を得ていた修一の言葉に動揺を隠せない
俺はしどろもどろになりながら狼狽えて、何か言い訳をしないといけないと考えたが、そう簡単には浮かばなかった
そんな俺の様子を見たからか、後ろに居る修一がプルプルと身体を震わせた後で、ぶはっと勢いよく噴き出した
「ぷっ……ははっ……さとが嘘つくと、わかりやすくて助かるな。癖って、こんな時まで出るもんなんだ」
なんか、気ぃ抜けた。そう言って修一は、あろう事か俺の肩口に頭を預けてきた。そしてそのまま暫く笑い続ける
修一の髪の毛が首筋を掠めた瞬間、くすぐったくて咄嗟に目を瞑った
俺を惑わす香りが、一段と増した。ちょっとでも横に顔を傾ければ、キスだって出来てしまう距離
俺には、刺激が、強過ぎる
「しゅ、しゅういちっ……!」
「図星だろ?だったら、これからは遠慮なく触れるな。あー、もう怒ってないからさ、さっさと白状しちゃえよ」
「触れるって、何だよっ。いい加減離しやがれっ」
「はいはい。暴れないで」
「お前っ、全然聞く気ないだろっ……!」
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