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「修一、もう、いいだろ。離せ」
「……んっとに、強情だなあ。言いたくないなら言わなくていいよ。その代わり、ずっとこのままだけど」
修一はこのまま、俺の身体を離さない気らしい。それを聞いて、もう怒ってないんじゃなかったのか、と言いたくなった。怒っていないなら、早く離して欲しいのに
「も、何なのお前……そっちこそ、意味わかんない」
理由が聞きたいからって、普通、ここまでするもんだろうか。俺が逃げない様にするなら、何もこんな体勢じゃなくたっていいんじゃないのか
これじゃあ、ただの拷問だ。いや、今の俺にはある意味でピッタリの仕打ちなのかも知れないけれど
「なあ、さと」
「何だよ」
「なんかこれ、本当に恋人同士みたいだよな」
ほら、と修一に握り締められている右手を目の高さまで上げられた
眼前にある俺の右手と修一の左手は恋人繋ぎという訳でもなく、俺から握り返してる訳でもないけれど、普通友人同士で、しかも男同士がこんな風に手を繋いだりする筈もない
正に、恋人みたいだ
そう言う事をさらりと言ってのけた修一に呆れて、はあ、と絶大な溜息を漏らす。唯一自由な左手で顔を覆い隠して、じわじわと赤く染まっていく顔を隠した
「……俺は、認めてない」
「ほんと強情」
「っ、お前こそ、一度決めたら曲げない性格直せよ。恋人がどうとか、言った後で引っ込みが効かなくなったとかなら今のうちにーー」
「はいはい、さとちゃん、とりあえず大人しくして。暴れないでってば。俺、ツンデレも好きだけどデレは多めがいいな」
「~ッ」
目に見える様に会話が噛み合わなくなってきて、若干頭が痛くなってきた。というより、本当に、こいつは人の話を聞きやしない
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