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俺は修一とは真逆を向いて、修一が寝るのをひたすら待つ事にした。室内には時計の針の音が響いていたが、それ以上に大きく鳴る心臓の音がやけにうるさく感じた
泊まっていくのは、百歩譲っていいとしよう。でも、ここはシングルベッドの上だ
少し身動ぎをしただけでも、隣に居る修一の身体とぶつかってしまう。吐息が直ぐ近くに聞こえて、触れていなくとも僅かだが布団を伝って修一の体温を感じる
その事が、俺の心臓の鼓動を速くしてる。何も考えられなくする
早く、寝ればいい。そう願わずには居られなかった
ベッドに入って暫くの時間、二人の間に流れていた静寂を壊したのは、修一の方だった。その声は先程と同様、柔らかい
「なあ、さと。もう寝た?」
「寝た」
「明日お互い二限からだったよな」
「……そうだな」
「明日さともバイトだよな」
「そうだな」
「暫く泊まってもいいよな」
「そうだな……って、え?」
修一が淡々とした口調で聞いてくる質問に、寝たとは言いつつ返答を返す。しかし、三つ目の質問に答えたあと一拍ほどおいて、引っかかりを覚えた俺は質問の内容を思い返した
先の二つの質問に答える流れでそのまま答えてしまったが、今、三つ目の質問は何て言った?暫く、泊まる……?
「……は、はあっ!?」
「決まりな。じゃあ新しい着替え持ってくる」
「ちょっ……、なっ……!」
嵌められた、と気付いた時にはもう遅かった。俺が驚いて飛び起きると、隣からはクスクスと笑う声が聞こえてくる
いや、ちょっと待て。暫くってどういう意味だ、暫くって
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