【5】

12/15

1898人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
俺は修一とは真逆を向いて、修一が寝るのをひたすら待つ事にした。室内には時計の針の音が響いていたが、それ以上に大きく鳴る心臓の音がやけにうるさく感じた 泊まっていくのは、百歩譲っていいとしよう。でも、ここはシングルベッドの上だ 少し身動ぎをしただけでも、隣に居る修一の身体とぶつかってしまう。吐息が直ぐ近くに聞こえて、触れていなくとも僅かだが布団を伝って修一の体温を感じる その事が、俺の心臓の鼓動を速くしてる。何も考えられなくする 早く、寝ればいい。そう願わずには居られなかった ベッドに入って暫くの時間、二人の間に流れていた静寂を壊したのは、修一の方だった。その声は先程と同様、柔らかい 「なあ、さと。もう寝た?」 「寝た」 「明日お互い二限からだったよな」 「……そうだな」 「明日さともバイトだよな」 「そうだな」 「暫く泊まってもいいよな」 「そうだな……って、え?」 修一が淡々とした口調で聞いてくる質問に、寝たとは言いつつ返答を返す。しかし、三つ目の質問に答えたあと一拍ほどおいて、引っかかりを覚えた俺は質問の内容を思い返した 先の二つの質問に答える流れでそのまま答えてしまったが、今、三つ目の質問は何て言った?暫く、泊まる……? 「……は、はあっ!?」 「決まりな。じゃあ新しい着替え持ってくる」 「ちょっ……、なっ……!」 嵌められた、と気付いた時にはもう遅かった。俺が驚いて飛び起きると、隣からはクスクスと笑う声が聞こえてくる いや、ちょっと待て。暫くってどういう意味だ、暫くって
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1898人が本棚に入れています
本棚に追加