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「暫くってのは、そのままの意味だよ」
心の中で思っていた筈の疑問に、何故か返答が返ってきてビックリした。どうやら俺は、心の声をそのまま口にしていたらしい
思った事が口に出てた恥ずかしさからか、俺の顔がぶわっと音を立てて赤くなる
カーテンを閉め切ったこの部屋は月明かりも入らず真っ暗で、視界はぼんやりとしててよく見えない。だから多分、修一も同じく見えていないと思う
良かった、こんな顔、見られなくて
「あ、因みに異論は認めないから。じゃあ、お休み」
「な……おまっ、横暴だっ」
修一は自分の言いたい事だけを言って、まるで何事も無かった様に寝る体勢に入った。俺に背を向け、布団を深々と被る
寝ようと……は、してなかったが、人を起こしておいて言い逃げしてんじゃねえよ
何が暫くだ。毎日泊まる気で居んのかよ。誰が、そんな事認めるか
俺が修一の肩を揺さぶり、起きて前言を撤回しろと求めると、修一は盛大な溜息を漏らして素直じゃないなと呟いた
「素直じゃないさとと付き合うなら、これ位強引の方が丁度いいと思うけど」
「~ッ、それはどういう意味だっ」
答えろと言った所で修一が答えてくれる筈もなく、それ以降狸寝入りを決め込んでいるのか、修一は俺の呼びかけに一切反応しなかった
「おい」
「……」
「修一、いい加減にしろっ……」
「…………」
「……っあー、もう」
本当に、知らないからな。どうなっても
俺は頭をぐしゃぐしゃと掻き乱すと、修一の身体を踏み付けてベッドから降りた。ボフッと音を立ててソファーに寝転がり、置いておいた毛布を頭まで被って、最早不貞寝にも近い状態で目を閉じた
最後の最後まで、修一に振り回されて終わった。状況整理の追い付かない頭は今にもショートしそうで、どうしてこうなったのか、考えても考えても答えは一向に見つからなかった
修一は、本当に厄介だ。長い間近くに居から、お互いの性格を熟知している。多少強引じゃないと俺が承諾しない事くらい、わかってたんだろうな
最悪だよ。本当に。悪かったな、そんな強引な所も好きで
手放しで喜べない状況なのに、どうしようもなく込み上げてくるこの気持ちは何なんだ。何で俺、こんなに手、震えてんだ
何でこんなに、目頭が熱いんだ
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