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「………………お前さ、何でここに居んの」
夜空に無数の星が瞬く夜22時。何故か俺の目の前に、ここに居る筈の無い人物が居た
「よっ、酒買って来たぜ」
「……は?」
一人で暮らす俺の家の玄関前で、幼馴染みはコンビニのロゴが入った袋を俺に見せて、部屋に入れろと言ってきた
俺は勿論修一の姿を確認した瞬間に固まり、ドアを開けた態勢のまま、何とも間抜けな声を上げた
顔の辺りまで持ち上げられた袋の中身が、ビニール越しに見える。酒や酎ハイ、つまみのピーナッツやサラミ
俺は袋と修一を交互に見つめるも、やはり、現状は理解出来なかった
だって、今日の約束はキャンセルになった筈だ。何で、お前がここに居るんだよ
突然の出来事に俺は動揺を隠せず、目を泳がせる。今日は会う事が無いと思い込んでいたから、本気で油断してた
会えると思っていた日に会えなくなるのはとてつもなく辛い事だが、会えないと思っていた日に会えるなんて、これ程嬉しい事もそうないだろう
修一に会えた嬉しさからか、それとも俺には勿体ない程の笑顔を向けられたからか、心臓が、否が応でも跳ねる
顔が熱くて、もしかしたら、目に見える程に赤くなっているかも知れない。風呂上がりで無ければ、俺は迷わず顔を隠していただろう
玄関のドアを開けた状態の俺と、玄関の真ん前に立つ修一の距離はとても近くて、このまま手を伸ばせば直ぐに届いてしまう
修一に彼女が居るという現実を、一瞬だけ、忘れた
しっかりしろ。修一の、今日の予定を思い出せ
「……彼女と、デートじゃなかったのかよ」
「ん?ああ、一緒にごはん食べて、ちゃんと家まで送ってきた。とりあえず上がるぞー」
「いや、ちょっ……」
俺の待てという制止を振り切り、俺の身体を押し退けて無理矢理玄関に入って来た修一は、靴を脱いでそのまま部屋に続く廊下を歩いていく
俺は慌てて修一を追うが、ここはワンルームの狭い部屋だ。修一は直ぐに部屋にたどり着き、ソファーに座って早々とコンビニで買ってきた物をテーブルの上に広げ始めた
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