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「後から、色々考えたんだ。あの時はいきなりだったし、正直戸惑ってたけど……考えれば考える程、あの状況でさとが冗談を言ったとも思えなくてさ。さとがどんな気持ちでああ言ったのかわかんない。わかんないから、知りたい」
濁りの無い、澄んだ瞳が俺を捉える。修一の発する言葉には、疑問に思う感情の他にも、様々な感情が見え隠れしている気がした
俺が協力しようかと、言ってる様に聞こえたのは、俺の気のせいなんだろうか。あの時は試すなんて考えられなかったけど、今なら考える。そう捉えたっておかしくはない言い方をしてはいなかったか
多分、修一は純粋に俺の事を心配してくれてるんだろうと思う。女が好きになれない事を、俺が本気で悩んでるんだと思ってこんな風に言ってきたんじゃないかって
でも、そんな気持ちは、俺には勿体なさすぎる
「はあ、冗談だって何度も言ってんだろ。だからこの話、もう終わりな」
俺は冗談だと言い切って、わざと盛大に溜息を漏らした
真剣に考えてくれた事は嬉しいよ。俺の事を心配してくれたってだけで、軽く泣きそうになるくらい、嬉しい
けど、お前の優しさにつけ込む事は出来ない。純粋な気持ちを、これ以上俺の醜い感情で汚したくない
だから、この話は、もう終わり
って、言ってるのに修一はまだ何かを考える素振りを見せて、俺がまた頭を悩ませる様な事をぼそりと呟いた
「何をすれば、試すって事になるんだろうな」
「……いい加減、人の話を聞けよ」
今、この話は終わりにしようって、俺言ったよな。それが何でそんな返答になるんだよ
今度は、わざとじゃなく本気で溜息を漏らす。時々、こいつの考えてる事が本当にわかんない
「いいじゃん。男がいけるかどうか、まだわかってないだろ……?」
「そ……れは、そうだけど」
間違いでは、ないんだけど
それより、さっきから、なんか近くないか
「ねえ、何がしたかった?」
「な、にって……だから別に……」
「キスとか?」
「っ……い、や」
「あれ、違うのか」
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